世界最高レベルの大一番で“ミドル合戦”。守備戦術が極まった現代サッカーを象徴していた【コラム】
最後まで崩し切るのは至難の業
4月9日、チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝ファーストレグ。レアル・マドリーがマンチェスター・シティを迎え撃ち、3-3で引き分けている。それぞれ違ったコンセプトのプレーだったが、世界最高レベルのクオリティ、インテンシティだった。 【動画】マドリー対シティ、圧巻のミドル合戦 カルロ・アンチェロッティ監督が率いるマドリーは、いわゆる戦術がないのが戦術と言える。つまり、ピッチに立った選手たちが相手に適応し、自分たちの最大限のプレーができる。定型がないことで、撓みが生まれて、無限の強さになっているというのか。 ロドリゴ、ヴィニシウス・ジュニオールの二人だけでカウンターを完結できるし、アントニオ・リュディガーはアーリング・ハーランドを相手に互角で、ダニエル・カルバハルは老練さを見せ、ジュード・ベリンガムは攻守ともに迫力満点の帝王のようで、フェデリコ・バルベルデは相変わらず一発の質量が破格だった。全体としては主導権を握れなくても、局面での勝利によって、戦い全体を旋回させられる。 もっとも、試合序盤はペースをつかめなかった。本来はMFのチュアメニをセンターバックに起用し、ボランチのような(高さの)ファウルで止めてしまい、イエローを食らい、ミドルレンジのFKを放り込まれてしまう。思いがけない劣勢のスタートだったが、じわじわと攻め返す。 そしてエドゥアルド・カマビンガがカットインし、左足ミドルを放つと、相手に当たってネットを揺らした。その後、ヴィニシウスのパスを受けたロドリゴがカウンターでDF、GKの虚を突いて逆転。そこまでの展開は神がかっていた。 ところが、シティも王者としての深淵を見せる。ベルナルド・シウバが右から押し込んだ後、フォデンがバックラインを横切り、左足でミドルを沈め、同点に。さらに、再び最終ラインを下げたところで、わずかに出足が鈍くなったところ、グバルディオルがミドルを叩き込んだ。 守備戦術が極まった現代、最後まで崩し切るのは至難の業だけに、ラインを押し下げ、その前から打つ中距離のシュートが勝敗を分けるが、両チームはまさにその飛び道具を持っている選手たちを揃えていた。 マドリーが再び同点にしたシーンでは、交代出場のルカ・モドリッチが鬼気迫るドリブルでラインを押し下げると、左のヴィニシウスへパス。ヴィニシウスはこれを逆サイドで後方から走り込んだバルベルデに合わせ、強烈な一撃が叩き込まれた。崩し切るまでもなく、ミドルで追いついたのだ。 中距離からのシュートが多く、その展開は現代のサッカーを象徴していた。 文●小宮良之 【著者プロフィール】 こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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