奈良山奥にポツンと巨大な「黒光りゴキブリ像」…会社視察、バスツアー、外国人で人口43人の過疎村が賑わうワケ
■黒光りのゴキブリが地元の貴重な観光資源に 像の設置をきっかけにして例年秋に、ゴキブリ供養祭が実施されることになった。強烈な話題性は近年、SNSを通じて、次第に広がっていく。害虫駆除を手がける会社の視察のほか、遠方からわざわざ護鬼佛理天像を見に村を訪れる若者がいたり、バスツアーが寺に立ち寄ったりするようになった。近年は、世界各地からも参拝客が訪れているという。 嫌われ者のゴキブリが、地元の貴重な観光資源に転じたというわけだ。 「当初は怪訝な目でみていた檀家さんも、次第に慣れていきました。それどころか、今では寺や集落には欠かせない存在になっています。若者は高校で村を去り、普段は何もない寂しいところです。村そのものが消えようとしている中で、人を集められるものがほしいというのが先代住職の強い思いでした。うちの寺だから、こんな奇抜な像が建てられたと思っています。この寺では、ゴキブリと共生しているかって? いや、それは無理ですね。躊躇なく駆除しています(笑)」(美穂さん) 児島住職や南園社長の思いは結実した。 児島住職は2014(平成26)年に亡くなったが、供養祭は続けられている(コロナ禍の間は中断)。折しも来年2025(令和7)年は、その興産(現・SONO)の50周年と、児島前住職の十三回忌の節目にあたる。林泉寺では、同年秋に盛大なゴキブリ供養祭を実施する予定だ。 ---------- 鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり) 浄土宗僧侶/ジャーナリスト 1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。 ----------
浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳