英のTPP加盟議定書が発効 日本への効果限定的も…「自由貿易の枠組み拡大にメリット」
環太平洋経済連携協定(TPP)に英国が加盟する議定書が15日に発効した。すでに日英2国間の貿易協定があるため、日本にとって経済効果は限定的だが、自国優先の保護主義が台頭する中、価値観を共有する英国をTPPに迎え入れるメリットは大きい。アジア太平洋を中心とした地域に限られていた加盟国が欧州に広がり、日本の産業界も期待を高めている。 ■精米やパックご飯の関税撤廃 内閣官房によると、英国の加盟によってTPP加盟国の国内総生産(GDP)の合計額は11・6兆ドルから14・7兆ドルに、世界全体のGDPに占める割合は11・6%から14・7%に増える。貿易総額は7・5兆ドルから8・7兆ドルに拡大する。 TPPは99%の品目で関税が段階的に撤廃されるが、日本と英国は2020年に経済連携協定(EPA)を結んでおり、日本の輸出で新たに関税が撤廃されるのは精米やパックご飯に限られ、追加的な効果はそれほど大きくない。 しかし、第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「日本にとってはむしろ、自由貿易の枠組みが広がることにメリットがある」と強調する。 ■中国、台湾も加盟申請済み 米国が17年にTPPから離脱して以降、多くの国が保護主義に傾斜。米国大統領に再選したトランプ氏は日本を含むすべての国に対して関税を引き上げる考えを示すなど世界の自由貿易体制は危機にさらされている。 こうした中、自由貿易を重視する英国は、日本とともにTPPの旗振り役として多国間の枠組みをリードする重要なパートナーになり得る。英国参加が呼び水となってTPPが拡大に転じ、自由貿易の後退に歯止めがかかることが期待される。 TPPには中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシアが加盟を申請済み。コスタリカは11月から加盟交渉に入った。加盟国の拡大はTPPにとっても課題だが、田中氏は「TPPが定める厳しい自由貿易の基準をクリアするのは簡単ではない」と指摘する。(万福博之)