ドラフト候補もかつては「体が弱かった」…浦和学院の青年監督が実践した常勝チーム、逸材の育成プラン
春夏合わせて26回の出場実績を持つ名門・浦和学院。30年チームを率いた森士監督が、2021年に勇退されたが、長男・森大監督が引き継いで2022年にはセンバツ出場でベスト4。同年のドラフトでは、金田優太を千葉ロッテにドラフト5位で送り出した。 【一覧】進路を表明した選手 2023年にも夏の甲子園に出場を果たし、着実に実績を残している森大監督。特に就任1年目の2021年は、「瞬発力と持久力を融合させたスピード&パワーのある選手」を実現するためのメニューを、森監督は考えていたという。 「以前から瞬発力系の練習もやっていましたが、結果に繋がらなかった。だから八谷(晟歩)たちの世代から休息をキチンと挟みながら、瞬発力系のトレーニングは継続的に取り組むようにしました。 もちろん、彼らの野球能力も引き伸ばせるようなメニューなど、バランスよくオフシーズンに頑張ったので、センバツではチームで4本塁打出て、ベスト4まで勝ち上がることができました」 森士前監督の指導によって持久力やパワーは身に着いていたが、スポーツメーカー・ゼットが実施する、ゼット測定などの測定結果からスピードや柔軟性で課題を感じていた。そのことが理由で、森大監督は初めての冬場の課題として指導して、春先に結果を残した。ただ、夏は簡単ではなかった。 「彼らはまだコロナ禍が残っていることもあって、体調不良が出やすかったんです。だから私たちも空調の効いた部屋で休ませ過ぎてしまい、結果的に大事な夏の大会の時に、夏バテしやすいコンディション、フィジカルになってしまった。だから埼玉大会で7連勝するだけの持久力が足りず、決勝戦では力が及びませんでした」 だから、次の江口英寿主将たちの世代より、スピード&パワーに加えて、夏バテしない体というのを、目標に加えた。 「八谷たちの反省を受けて、江口たちからは『夏に勝つ組織にしよう』ということを強く意識するようになって、そのなかで体づくりに対して強く意識したんです。 引き続き瞬発力系のメニューは実施しましたけど、それだけじゃなくて持久力系のメニューもバランスよく組み合わせつつ、睡眠なども含めてすべてが噛み合ってバランスよくできたことで、コンディションを整えました。結果、埼玉大会を勝ち切って、甲子園にたどり着きました。その点でいえば、私たちの思惑通りに結果が出た世代でした」 年々改良を重ねたことで、2023年は夏の甲子園に出場。甲子園では初戦で敗れたものの、成果は戦績に反映された1年だった。 そして2024年は残念ながら埼玉大会準々決勝敗退だったが、「ケガ人が出ませんでしたので、成果が出た世代だと思います」と評価している。 なかでも、ドラフト候補に挙げられ、チームの主将として先頭に立っていた三井雄心に対しては、称賛の声を送る。 「彼は去年までずっとケガしがちだったんですよ。実際に2年生の夏、埼玉大会は最後の2試合、甲子園でも5回までしか出場していません。 彼の場合、注目度も高くて、とても話題になっていましたが、フィジカルが弱くて、先走っていた技術に対して、体が追いついていませんでした。だからフルで試合に出続けることができなかった。なので、フィジカル強化、休息、食事の3つをしっかりバランスよくアプローチし直しました。 三井自身も取り組み方が相当変わって、一生懸命取り組んでくれたので、土台となるケガをしないタフな体づくりができた。そのおかげで先走っていた技術に追いついて、最後の夏は良いフィジカルの状態でフル出場を果たして、ベストパフォーマンスを発揮しました。甲子園出場は叶わなかったですが、最後の夏を怪我なく戦い抜いたのは大きかったと思いますし、本当に成長したと思います」(森監督) 西田瞬新主将を中心に、新チームももちろんトレーニングなどを通じて、フィジカル強化を行っている。そして休息などを挟んで管理・調整するという。このバランス感覚を重視する姿勢は変わらない。夏の甲子園出場、そして全国制覇の目標を達成するためであることはもちろんだが、選手たちの自信を持たせるためでもあるようだ。 「フィジカルの充実は、メンタルと凄く相関関係があると考えています。例えば体の調子がいいだけでも、気持ちが前向きになれると思うんです。だからフィジカルの充実ぶりは、メンタルの充実も左右すると思うんです。 ですので、高校野球における2年4ヶ月で、フィジカルの充実を目指し、暑い夏を戦い抜く力を身につけることで選手にとってプラスになれるはずなんです。その経験が次のステージに生かせると思います。だから今後も体づくりは1番大事なところだと捉えて、3つのバランスを大事にしながら続けていきたいです」 対応策は考えているものの、まだまだ異常気象による酷暑の中でプレーすることは続くだろう。新基準バットによる打撃への課題も、そう簡単に解決できないだろう。しかし、浦和学院の取り組みのように、土台となるフィジカルを出来る限り強化・管理・調整をすれば、解決策は見えてくるかもしれない。 新チームで再スタートした今だからこそ、出来ることを見直して、徹底して取り組んでみてはどうだろうか。