「東洋一の可動橋」と呼ばれた勝鬨橋 その名前の由来とは?
1970年11月29日が最後
1953(昭和28)年を過ぎると大型船舶の通航量が減少したことで、橋の跳開回数も減少していった。1964(昭和39)年以降になると、跳開の回数も年100回を下回るようになり、船舶に対する跳開は1967(昭和42)年が最後となった。それ以後は、年に一度の検査時に跳開するだけとなり、それさえも交通量の増加を理由に1970(昭和45)年11月29日を最後に取り止めた。以降、電気は通電状態にあったものの、1980(昭和55)年に電気の送電も停止され、二度と可動させることはできなくなった。
橋梁内部は見学可能、毎週木曜に「勝どき橋橋脚内見学ツアー」
勝鬨橋の築地側のたもとには、橋用の変電所を再活用して開設した「かちどき橋の資料館」がある。ここには、勝鬨橋の模型やパネルや実物の電気設備などの展示が常設されており、誰もが気軽に利用できる(休館日:日、月、水)。なかでも、毎週木曜日には「勝どき橋橋脚内見学ツアー(事前申し込み、抽選制、参加費無料)」が午前と午後に2回実施があり、橋の歴史や構造、機械設備などの解説とともに橋脚内部を案内してくれる。 見学は1回約90分で、各回10名限定、もちろん参加費は無料。詳細や申込み方法は「橋脚内見学ツアー」で検索し、応募もWEB上からできる。小学生(身長110cm)以上が対象で、一部の場所では落下防止のため安全装置を体に装着する必要があり、体重制限もある。詳しくは、東京都道路整備保全公社「かちどき橋の資料館」情報ページへ。
工事費は418万円、現在では22億円以上
架橋位置は東京都中央区に位置し、隅田川を挟んだ築地6丁目と勝どき1丁目に架かる都道304号、通称「晴海通り」の橋である。その構造は、国内唯一の「シカゴ型双葉跳開橋(そうようちょうかいきょう)」であり、その構造は大きく3つに分けられる。中央にある可動(開閉)部と、その左右両側にある固定部をソリッドリブタイドアーチ橋と呼ぶ。全橋長は246m、有効幅員は22mで、中央可動部の径間長は44mもある。 橋格は「一等橋」を誇る。工事費は当時の価格で418万円、現在の貨幣価値に換算すればおおよそ22億3千万円くらいにはなろうか。2014年、さらに下流に架かる「築地大橋」が完成するまでは、隅田川として一番下流の橋であった。2007年6月に「日本国重要文化財」に指定されたほか、2017年には跳開部の機械設備が「機械遺産(日本機械学会)」として認定された。 近年、再び可動部を跳開させようと一部の市民団体や都議などによる働きかけがあったものの、実現には至っていない。バブル期の1990年には、世界都市博覧会の目玉企画として跳開が計画されたが、都市博そのものが中止となり、立ち消えとなった。動かすための修復費用は、東京都の試算では10億円ともいわれる。是が非でも跳開する姿を見てみたいものである。 文・写真/工藤直通 資料提供/「かちどき橋の資料館」、参考文献/「土木建築工事画報」(昭和5年2月号)、「土木工学」(第4巻第7号昭和10年7月) くどう・なおみち日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元日本鉄道電気技術協会技術主幹。芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員