ポルシェが主力車種マカンの完全電動化に踏み切った理由
2024年3月、中国の家電メーカーであるシャオミ(Xiaomi)が初の電気自動車(BEV)を発売、約30分で5万台も受注したことが大きな話題を呼んだ。スマートフォンで世界3位のシェアを生かし、スマホ、家電、そして自動車に独自の統合OSを採用することで、ユーザーを一気に囲い込もうという狙いがあるようだ。 【関連画像】今年発表された新型パナメーラ。日本で販売されるモデルもラインアップの半数以上をPHEVにしている これまで内燃エンジン(ICE)車をつくり続けてきた既存の自動車メーカーが、独自にOSを開発し、家電に搭載するのはもはや困難だ。先日、トヨタ自動車が中国IT企業のテンセントと提携を発表したのも、ソニーとホンダが合弁会社、ソニー・ホンダモビリティを設立したのも目指す方向はシャオミと同じだろう。 一方でグローバルでの生産台数が50万台に満たないプレミアムカーメーカーやスポーツカーメーカーは、ブランド力を武器にそれらとはまた異なる戦略を採る。ドイツのポルシェを題材にその一例を見てみよう。 ●2030年までに8割をBEVへ 2024年1月末、ポルシェの人気SUV、マカンの新型モデルがワールドプレミアされた。初代のデビューが2013年のことだから11年ぶりのフルモデルチェンジとなる。新型マカンはタイカンに続くポルシェの第2弾BEV専用モデルへと生まれかわり、ICE搭載車の設定はない。なお、日本ではICEの旧モデルとBEVの新モデルがしばらく併売される。 ポルシェの2023年のグローバル販売台数は32万221台と過去最高を記録(ちなみに国内の新規登録台数も初の8000台超え)。もっとも売れているのがカイエン(8万7553台)、僅差でマカン(8万7355台)が2位につけている。これに911(5万146台)、タイカン(4万629台)、パナメーラ(3万4020台)、718ボクスター&ケイマン(2万518台)の順で続く。 自動車メーカー各社にとって懸案の中国市場では、ポルシェも15%減の7万9283台とこれまでの勢いに陰りが見える。しかし、それ以外のエリアで好調に業績を伸ばし史上最高益となっている。メインマーケットはやはり北米市場(前年比9%増の8万6059台)で欧州も12%増と好調だ。またブランド初のBEVであるタイカンも、日本では911ほどは見かけないが、グローバルでは17%増となっている。デビュー当初に取材した際、タイカンはツッフェンハウゼンの本社工場で生産を行い年間3万台くらいのキャパシティーがあると聞いたが、いまでは4万台を超えている。 そしてポルシェはいま、2030年までに新車販売の80%以上をBEVにするという目標を掲げている。ポルシェにとって文字通り虎の子のマカン(インドネシア語で虎の意)をBEV専用車にスイッチするというのだから、電動化に懸けるポルシェの本気度がうかがい知れる。