それ、偽痛風かも…60歳以上で関節痛と発熱 原因ははっきりせず…好発部位の大半が膝関節
【生島ヒロシ オヤジの処方箋】芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(73)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は「痛風」と、痛風に似た症状が出る「偽痛風(ぎつうふう)」を取り上げます。 こんにちは、生島ヒロシです。さあ、師走。忘年会シーズンですね。お酒の量が増えて、痛風が心配…というお父さんも多いんじゃないですか。ところで「偽痛風」って知ってますか?痛風と同じ激痛が走る病気ということなんですが“ニセの痛風”ってどういうこと?KARADA内科クリニック渋谷の田中雅之(まさし)院長に教えていただきましょう。 田中先生、痛風と偽痛風、どう違うんでしょうか? 「患部に結晶が沈着して炎症を引き起こし痛みが出る、というメカニズムは同じですが、結晶になる原因物質が異なります。痛風は尿酸、偽痛風はピロリン酸カルシウムという物質です」 痛風といえば、足の親指の付け根が赤く腫れて痛くなるイメージですが、偽痛風はどこが痛くなるんですか? 「好発部位は、痛風はおっしゃる通り足の親指の付け根。偽痛風は、半数以上が膝の関節に出ると言われております」 痛風はビールの飲み過ぎ、魚卵の食べ過ぎと言われますけど、偽痛風の原因は何ですか? 「痛風を引き起こす尿酸は、体内でプリン体という物質が分解された後にできる一種の老廃物です。この尿酸の数値の急激な変動によって発症します。一方、偽痛風は、実は原因がはっきりと分かっていません。加齢が発症リスクの一つと言われています」 偽痛風は厄介ですね。お医者さんは、どう見分けるんですか? 「まず好発部位です。足の親指の付け根なら痛風、膝の関節なら偽痛風を疑います。ただ、小さい関節に起こることが多い痛風は足の親指以外でも発症しますし、偽痛風も手首、足首、肩、股関節、さらには頸椎(けいつい)にも出ます。正確に診断するために、その部位の関節液を採取して、どちらの結晶があるか検査することがあります。年齢も判断材料です。20、30代なら偽痛風とはあまり考えられません。70歳以上、さらには過去に痛風発作の歴がなければ偽痛風と考えます。偽痛風には発熱を伴うこともあるという特徴もあります」 治療法も違うんですか? 「どちらであってもしっかり痛みを抑えましょう。ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬の服用です。偽痛風には特によく効きます。痛みが出たら病院で診察を受けていただきたいですが、家でできることとしては、患部を冷やすこと。逆に、温めることはやめてください。もむのもよくありません。痛くてもめないとは思いますが…」 痛いのは嫌です。予防法を教えてください。 「痛風は尿酸値を下げるための食生活改善、飲酒制限です。プリン体をカットしたお酒は尿酸値の観点からはいいお酒と言えますが、だからといってたくさん飲んでいいということではありません。注意してください。またポリフェノールを含むコーヒーやワイン、ヨーグルトは尿酸値を下げる食品という報告もあります。偽痛風は加齢が関係していると考えられるので、誰にでも起こり得る病気です。特定の食べ物との関連も分かっていません。脱水症状が関与している可能性はありますので、水分をしっかり取ることが大事だと思います」 偽痛風は予防が難しい病気ですね。 「高齢者が不明熱で受診した際に、最終的に偽痛風を診断することがあります。ただ、“風邪ですね”と診断されてしまうこともあります。それは、膝の関節が腫れていることに気付かない、なかなか診療しないからです。加えて、患者さん自身も、膝が腫れていることに気付いていない、あるいは、関係ないこととして自分でお話しされない方もいます。ヘルパーさんが自宅で入浴を手伝っているときに気付いて、家族が把握することもあります。ぜひ病院では、発熱の原因を調べている際に“膝が腫れている”など体の変化を積極的に伝えるようにしていただけると私たちも大変助かります。ここは内科で整形外科ではないからという遠慮は不要です。偽痛風は放置するとなかなか熱が下がりませんし、痛みも続き疲弊されてしまいますからね」 私は40代の頃、尿酸値が基準の上限の7・0を大幅に上回る13・4あったことがありました。親指の付け根ではなく、かかとが痛くなって。ウオーキングを一生懸命やって、これが良かったのか、数値が下がりました。今は基準値以内。でももう70歳を超えてますから、今は偽痛風を心配しないと。関節が痛くなって、熱もあったら、要注意。強烈な痛みを抱えたまま年末を迎えるなんて、嫌ですもんね。 ◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の73歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。健康に関する名物コーナーに登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。元為替ディーラーで経済評論家の岩本さゆみ氏との共著「日本経済 本当はどうなってる?」(青春出版社)が販売中。