欧州移籍の柿谷 アギーレジャパンのサイドアタッカーとして輝けるか
オファーを受けていたバーゼルへの移籍を決めた柿谷は、4歳のときから育てられ、誰よりも愛するセレッソに別れを告げるに至った理由を、サポーターやファンにこう打ち明けている。「もっと、もっと強くならないといけないと思いました」。 涙をこらえながら旅立ってから約1か月半。ピッチ内で専属通訳に、ピッチ外では家庭教師に不得手な英語を懸命に学びながら、柿谷はいずれも途中出場ながらリーグ戦ですでに2ゴールをあげている。強くなったという実感はあるのか、という問いに「何も変わっていないです」を2度繰り返した柿谷は、直後に悪戯小僧のような笑顔を浮かべながらこう付け加えている。「英語がしゃべるようになったくらいですね」。 1年前は未知の世界だった日本代表で生き残っていくために、直近の試合で結果を出そうと自分自身を必死に追い込んでいた。余裕がなかったと言ってもいい。いまはブラジルの地で痛感した日の丸の誇りと重さを胸に刻み、ワールドカップという夢舞台にもう一度立つために何が必要なのかを十分に理解した上で、自信を込めてベネズエラ戦だけに集中している。「チームコンセプトに関してはあまり多くのことを言えませんけど、どんなスタイルにも対応できるように準備をして、何よりも勝利にこだわってプレーしたい」。 今回招集されている中では岡崎と武藤嘉紀(FC東京)がいて、けがで招集を見送られた香川真司(ドルトムント)と原口元気(ヘルタ・ベルリン)が復帰を見すえ、J1で結果を残している宇佐美貴史(ガンバ大阪)も続く。最激戦区のひとつに数えられるのが必至の左ウイングで必ず生き残る――練習前に横浜市内で短く刈り込んだ髪が、柿谷の不退転の決意を象徴していた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)