食べ放題で「上タン50人前」注文して店長逆ギレ!? 「食べ放題」はどこまで食べていいのか【弁護士解説】
『店の在庫がある範囲で、料理の提供を続ける義務』
騒動の顛末はともあれ、一体、「食べ放題」は、時間制限や〝食べ残しをしない〟というルールの元ならどこまでも食べていいものなのか。それともやはりマナーや節度が存在するのか。 これはまさに〝国民的な大疑問〟。自身も食べ歩きが趣味のひとつだという南出優介弁護士はこう答えた。 「食べ放題については、民法で規定された定型的な契約ではないですが、あえて解釈するなら、店側は客に対し、客が指定した商品(料理)を継続して提供する義務を負い、この対価として客側が食べ放題料金を支払う契約、になると思います。こう解する以上、客が注文する限り、店側は際限なく料理を提供しないといけないことになります。 もっとも当事者の合理的意思解釈や、社会通念に基づいて考えると、おそらくこの義務は、『店の在庫がある範囲で、料理の提供を続ける義務』だと考えられます。そのため、客としては、店側の在庫がある限りは、食べる量に制限はなく、他方店としても、在庫のある限りは客の注文に応えないといけないと思います」 今回の騒動についてはこう付け加えた。 「今回の件については、そもそも事実関係について客側と店側が異なることを述べているようですし、どちらが悪いと言った話はできません。ただ、もし仮に店が、『他のお客さまの迷惑になるので』や『他のお客さまが食べる分を残したいので』、といった理由で料理提供を断るのであれば、それは法的には難しいと思います。食べられすぎて困るなら、始めからひとり〇人前まで、という定めをしておくのがいいと思いますね」
卓上サービス品の取りすぎは「法的に違法」と判断することは難しい?
また、食べ放題と関連して、牛丼チェーンや回転ずし店で、卓上に「ご自由にどうぞ」と置かれている紅ショウガやネギなどは同じく、どこまで食べていいものなのかを聞いてみると…。 「直箸で食べたり、直接口につけたりする行為は、すでに判決が出ているものもありますが、『器物損壊』や『威力業務妨害』として刑事処罰の対象になり得ます。また、民事上でも『不法行為に基づく損害賠償請求の対象』となります。他方で、卓上に置かれている紅ショウガなど『ご自由にどうぞ』的なサービス品の取りすぎについて、『法的に違法』と判断することは難しいと思います。 前提ですが、良識ある大人として、また店とのトラブルを避けるため、適切な分量(それが何人分かは分かりませんが)を取るべきとは思います。ただ、例えば置かれている分量のすべてを自分の皿に取ったからと言って、それが何か違法なことになるかと言われれば、正直うーん…と言った感じです。 おそらくこの、卓上トッピングについては、客がお金を払って、店が料理を提供する契約に付随したサービスと思いますが、店側が取る分量を限定しておらず、『ご自由に』等、制限がない記載をしている以上、法的に違法とは言えないと思います。 もっとも、卓上の無料トッピングは、あくまで自由に取っていい物であって、食べ放題ではないので、なくなったのに店が補充しないことからと言って、『債務不履行だ』と訴えることもできないと思います」(南出弁護士)