えっ、年金が増えるはずじゃ…年金を「336万円」失った75歳元サラリーマンの悲劇。「繰下げ受給」で後悔しないための3つのポイント【FPが助言】
税金上の注意
とりわけ75歳以上の方にとっては、税制面においても注意が必要です。後期高齢者医療制度では所得が145万円以上の場合、医療費の自己負担割合が30%に上がるからです。 さらに高額療養費制度の上限額まで、1.4倍程度まで上がってしまいます。せっかく繰下げ受給でもらえる年金額が増えても、医療費が余分にかかるようでは元の木阿弥です。
繰下げ受給で後悔しないためには
こうしたデメリットが潜んでいることから、年金の繰下げ受給はいいことばかりではありません。では、Aさんはいったいどうすればよかったのでしょうか? 同じ轍を踏まないために意識しておくべきことを3つ、まとめました。 ポイント1.「受給対象外になる年金」に注意 Aさんが受け取れなくなった加給年金のほかに、「特別支給の老齢厚生年金」も繰下げ受給の対象外となります。 特別支給の老齢厚生年金は、老齢厚生年金の受給開始の年齢が65歳に上がったことにより、60~64歳までのあいだに特別に支給される年金です。男性は1961年4月1日よりも前、女性は1966年4月1日よりも前が生年月日である場合、支給の対象となります。繰下げ受給をすると、60~64歳までのあいだに受け取れず、さらにこの年金は75歳からの増額の対象となることもありません。 ポイント2.重要な決断を下す前にライフプランをつくる ライフプラン、すなわちキャッシュフローは人生における羅針盤といえます。今回のケースでも、ライフプランを作成していれば加給年金の存在に気がついたかもしれません。損得の勘定も容易になりますし、子にかかる教育費も算出できます。そうすれば、65歳からの10年間がどれほど重要だったか把握できたでしょう。 ライフプランはプロに依頼することが無難ではありますが、最近では自分で作成できるシステムなどもリリースされています。もしいままでライフプランを作成したことがなければ、プロに依頼しましょう。プロによるライフプランを作成してもらうことで、老後のキャッシュフローが把握できていれば、税金面での注意点にも気がつけた可能性が高いです。 ポイント3.自分で投資することも視野に入れる 繰下げ受給をしなくとも、適切な投資を自分でできるのであればそれも選択肢の1つです。セカンドライフを迎えてからではとれるリスクにも限りがあります。なるべく早いうちから意識しておくべきといえるでしょう。受け取った年金や退職金の一部を運用して、取り崩しながら生活するイメージを持ちましょう。
決断の前に一度立ち止まってみる
Aさんは老後の不安から繰下げ受給を選択し、結果的には後悔することになってしまいました。人は不安が強いと冷静な判断ができず、性急に決断をくだしてしまいがちです。 不安に苛まれる前に、なるべく早くライフプランを作成してお金の流れをつくってしまうことを強くお勧めします。 波多 勇気 波多FP事務所 代表ファイナンシャルプランナー
波多 勇気
【関連記事】
- 月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
- 「退職金2,800万円」「貯金4,000万円」60歳定年退職のサラリーマン夫、花束を抱えて家路…自宅で待っていた妻の「衝撃のひと言」に戦慄
- 定年後は家でダラダラ過ごす年金16万円、65歳の元サラリーマン。「退職金と貯金で2,500万円だし、出不精・倹約家だから大丈夫」と思いきや…老後破産となったワケ【FPが解説】
- 年金「月5万円」増額のはずが…68歳男性、年金請求で判明した「年金繰下げ無効」に怒りも、年金事務所職員「ルールですから」で撃沈
- 「年金、月にいくらもらっていますか?」…日本の高齢者、衝撃回答を連発