「テトラポッド」製造会社株を旧村上ファンド系が買い増し 物言う株主登場で株価6割上昇
海岸線の浸食などを防ぐために設置される独特な形状の波消しブロック「テトラポッド」の製造元として知られる建設会社、不動テトラの株式を、旧村上ファンド系のアクティビスト(物言う株主)が買い増している。保有割合は発行済み株式の約4分の1に相当する24・94%に達しており、筆頭株主になっているとみられる。市場では、企業側への要求など、次の行動が注目されている。 【表でみる】「物言う株主」による株主提案の件数が増加している ■一時は東芝の筆頭株主にも 買い増しているのはシンガポールを拠点とする投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメント。17日に関東財務局に提出した変更報告書で、それまでの23・81%から買い増していたことがわかった。保有目的は「純投資」としており、一部については「投資一任契約に基づく顧客資産運用のため」と記している。エフィッシモへの対応について不動テトラの広報担当者は「友好的、建設的な対話をしている」と説明する。 エフィッシモは2006年6月に旧村上ファンドの出身者が設立。投資規模などは公開されていないが、日本国内で1兆円超を運用しているとの見方があり、存在感の大きいアクティビストだ。不正会計や原発の巨額損失問題で窮地に陥った東芝の増資を引き受け、筆頭株主になったこともある。同社の非上場化に向けた株式の売却で、巨額の利益を得たとみられる。 ■「企業を変える」要求出す? 川崎汽船に対しては、徐々に保有株数を増やし、企業が重要事項を決める際に事実上の拒否権を握る3分の1超の大株主になり、社外取締役を送り込んだ。同社は株価上昇につながる自社株買いや増配に踏み切った。 不動テトラにも、株主還元の強化などを求める可能性がある。このため、これまでのエフィッシモの買い増しを受けて同社株は上昇している。20日の午前終値は前日終値比40円安の2555円で、エフィッシモによる5・85%の保有が明らかになった20年11月19日からの上昇率は61%に達する。 大和総研の鈴木裕主席研究員は、「(投資先の)企業を変えることで値幅を取っていくのがアクティビスト。企業側に何らかの要求をすると考えるのが普通だろう」と話す。
不動テトラは06年にテトラと不動建設が合併してできた会社で、土木工事や地盤改良工事などを手掛ける。テトラは、フランスで開発されたテトラポッドを製造・販売する会社として1961年に設立されており、不動テトラがこの事業を受け継いでいる。(高橋寛次)