パチンコ業界が「総力を挙げ」子どもの車内放置対策を徹底するワケとは? 過去には死亡事故発生も、近年は“ゼロ”
死亡事故発生なら「社会から強いバッシング」
ただ、ホール側の努力により事故は未然に防げているものの、車内放置自体は依然として発生しており、昨年の未然防止事案のうち、2件で保護者が逮捕されていた。 事案発生を受け、全日遊連は組合員ホールに対し緊急通達を発出。「万が一死亡事故が発生した際は、これまでの業界の取組に対する評価が失われるとともに、社会からの強いバッシングを受けることとなる」と明記し、事案の周知と取り組みの再徹底を要請したという。 ただ、子ども連れでホールに来店した客に対し、一律で入店禁止とするなど、ペナルティーを設けるのは難しいとのことだ。 「風適法(風営法)では『十八歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること』は禁止されていますが、入店そのものは禁止されていません。 ですので、子ども連れでホールに来店した客を入店禁止とするかどうかは、個々のホールの判断に委ねられているのが現状です。 ただし、放置した人が遊技中の場合には、発見次第直ちに遊技を中止させ、ホール責任者から子どもの事故の危険性を説諭したうえで退店させているほか、悪質な事案に対しては、各ホールの判断で警察へ通報しています」(全日遊連)
子どもの車内放置、保護者は「懲役20年」の可能性
上述した2件のケースでは、保護者はいずれも保護責任者遺棄容疑で逮捕されたとのことだが、子どもを車内放置した場合、他にどのような罪に問われる可能性があるのだろうか。自身も一児の母である遠藤知穂弁護士は次のように解説する。 「保護責任者遺棄罪に問われるのは、車内に子どもを放置したものの、健康被害が生じなかった場合などです。同罪の刑罰は3か月~5年程度の懲役と定められています。 一方で、放置された子どもが熱中症等の健康被害を発症した場合や、死亡した場合には保護責任者遺棄致死傷罪に問われる可能性もあります。 同罪では『傷害の罪と比較して、重い刑により処断する』と決められていますから、保護責任者遺棄致傷の場合は3か月~15年の懲役が、保護責任者遺棄致死の場合は3~20年の懲役が科されることになるでしょう。 また、うっかりミスで子どもを放置したわけではなく、『ちょっとの時間なら』『窓を開けているから』『エアコンをつけているから』といった理由で、危険ではないと信じて疑わずに子どもを放置したケースでは、重過失致死罪(5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)や過失傷害罪(30万円以下の罰金または科料)、過失致死罪(50万円以下の罰金)が成立することも考えられます。 もっとも、健康被害が無い場合には、警察にすでに通報されていれば取り調べを受けるかもしれませんが、起訴される可能性は低いのではないでしょうか。 ただ、こうした事案を何度か起こしているという場合には、起訴という事態にはならなくても、児童相談所に通報されることもありえます」(遠藤弁護士)