母校のコーチで戻ってきた、元・楽天ドラフト1位右腕がアナリストチームの結成を提案 学内公募で集まってきた1期生たち
秋のリーグ戦で成功した「清原シフト」
アナリストを採用し、データ班を強化した成果は形になって表れている。 今秋の慶應義塾大学との開幕戦。二回表に相手の先頭打者・清原正吾(4年、慶應)が放った打球はセンターに抜けるかと思われた。しかし、二塁手の主将・田中祥都(4年、仙台育英)が正面で処理。ヒットを1本防いだ。 清原の打席で、田中はあらかじめ二塁ベース付近を守っていた。なぜ、このポジショニングだったのか? 佐々木チーフは次のように説明する。 「清原選手に限らず、対戦校の打者がどの方向に打球が多く飛ぶか、そのデータをメンバーに展開してます。清原選手の場合、センター方向への打球が多く、それは伝えましたが、田中がセカンドベースに寄ったのは本人の判断です。データに基づいて、チームとしてシフトを敷くことはありません。どうするかは野手に任せています。こちらとしては選択肢を示しただけです」 それでも「清原シフト」が決まった時はうれしかったという。「やったと思いましたね」。立教大が警戒していたのは、清原の一発だった。「清原選手にホームランが出ると、その試合だけでなく、カード全体の流れも慶大に傾く恐れがあるので」 秋の最初の打席でヒットが生まれていたら、気持ちに余裕を持って以後の打席に入れる。その分、ホームランが飛び出す可能性も高まったかもしれない。秋の初打席を封じたことには価値があった。立教大投手陣はこの試合、清原を5打数無安打に抑え、延長十一回にサヨナラ勝ちを収めた。 1勝1敗で迎えた3回戦も「清原シフト」が成功した。一回2死三塁。清原の打球は高く跳ね、そのままセンターに抜けそうだった。しかし、あらかじめ二塁ベースの後方にいた田中が難なく処理。適時打を1本防いだ。スコアは1-0。このシフトが2016年春以来となる慶大戦での勝ち点を引き寄せた面は大きいだろう。
自チームの分析も功を奏し、ホームラン数が増加
自チームに対する分析も好結果を呼んでいる。その一つが長打力だ。立教大は今春、チームの本塁打数がリーグ最少の2本だった。秋は4カードを終えた時点で、リーグ2位の9本を記録している。 佐々木チーフによると春のリーグ戦後、チーム初の試みとして、データ資料を用いた個人とチーム全体の振り返りを行ったという。「詳細は言えませんが、攻撃面についてはリーグ戦に出場した全選手の、とらえたゾーンや苦手とするコースなどのデータを出し、それを各自に伝えました。チームについては、長打力不足が明白だったので、長打を増やすためのフィードバックをしました」 木村監督は「データ収集に力を入れたことで、選手が狙い球を絞れるようになったのが一つの要因では」と見ている。 データ班が生まれ変わったことで、選手たちのデータや分析に対する食いつきも良くなったようだ。「データの見方を聞いてきたり、こういう資料がほしいとリクエストしてきたりする選手が増えてます」と佐々木チーフ。戸村コーチは「今の子は子どもの頃からデジタルの世の中だったので、データに抵抗がないと思います。昔の選手の中には『机上の空論』と拒否反応を示す人もいましたが、使えるものは使おうという感覚なのでしょう」と話す。 感覚としてはつかんでいた強みと弱み。それが数値で示されたことで変革が生まれ、新たな武器になっていると選手たちは感じているようだ。