「10年前の自分に平手打ちをして、この本が溶けるまで読ませたい」大人気ブロガーが後悔するほど激しく納得した『「好き」を言語化する技術』とは(レビュー)
■文章技術の本は腐るほどあるが、こんなにも寄り添ってくれる本がかつてあっただろうか
本書『「好き」を言語化する技術』は、「好き」「推し」について語りたいけどなにも言葉が出てこないし、どうやって語ればいいかわからない、ついには「ヤバい」と「尊い」しか言えなくなり、うめき声を上げながら街を彷徨っている語彙力ゾンビたちにとっての光となってくれます。本のポイントをまとめますと、 ・文章に必要なのは「工夫しようとする志」 ・言語化とは細分化のこと ・他人の言葉と自分の言葉を分ける ・感想を書くのに読解力や観察力はいらない ・妄想だから正しくなくていい ・「書きだし」は修正前提でとりあえず書く ・いったん最後までラフに書き終えよう など、とことん「言語化すること」についてのハードルを地面スレスレにまで下げ、かつ、一人でも多くの他人に自分の言葉が届くようになる技術を、丁寧に丁寧に伝授してくれます。文章力や文章技術についての本は腐るほどありますが、こんなにも隣で寄り添ってくれるような本がかつてあったでしょうか。 最も突き刺さった箇所は、「推しについて語ることで、自分の人生も捨てたもんじゃないな、と思えてきます。私は何度もそういう体験をしました」(P160)。冒頭で私が書いた「好き」を言語化する必要があるのか、に対する明確なアンサー。好きなものの魅力を語ることで、灰色だった自分の人生が彩られていく。もはやこれは本ではなく、優しさの具現化。 しかし、だからこそ私は今とても憤ってます。なぜ10年前にこの本が存在していないのか、と。この本があれば、あんな文章をネットに流すことはなかったのに、と。 もし過去に戻れるのであれば、10年前の自分に会って平手打ちをして、この本を紙が溶けるまで読ませたい。そして「好き」を言語化する技術を習得した後の1記事目は、絶対に三宅香帆さんのことを書きたい。 [レビュアー]かんそう(ブロガー) 1989年生まれ。北海道釧路市出身。2014年から、はてなブログにて個人ブログ「kansou」を運営し記事数は1000超、月間PVは最高240万アクセス、累計PVは5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。その名の通り音楽、ドラマ、映画、ラジオ、漫画、ゲームなどあらゆるカルチャーの「感想」を常軌を逸した表現力で綴っている。また自身の感情を爆発させた日記も人気で、「Mステの知らねぇ高校生がダンスするコーナーどういう気持ちで見りゃいいんだよ」「人生初の飛行機ファーストクラスで天国と地獄を見た」「死ぬほどサウナ入ってるのに一回も整ったことないしむしろ乱れてる」などの記事はX(旧Twitter)で数万リポストされ「Mステ」「ファーストクラス」「サウナ」のワードがトレンド入りを果たすほどの反響があった。クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務めた。 協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン ディスカヴァー・トゥエンティワン Book Bang編集部 新潮社
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