【密着】オーストラリア 結婚を機にゼロから花を学び、フローリストとして奮闘する娘へ届ける家族の想い
今回の配達先は、オーストラリア第三の都市・ブリスベン。ここでフローリストとして奮闘する坂部之奈さん(36)へ、静岡県で暮らす父・之宏さん(65)、母・絹代さん(63)、祖母・百合子さん(92)が届けたおもいとは―。
英語も話せない中、猛勉強。努力の末に憧れのフラワーショップに勤務
之奈さんがアルバイトとして週5日ほど勤務するフラワーショップ「Maison Fleur(メゾンフルール)」は、ブリスベン市内に3店舗を構える有名店。オーナーの1人であるバートさんは、2019年にフローリストの世界王者に輝くなど数々の賞を獲得してきた人物で、之奈さんにとっては師匠であり、憧れの存在だ。 フローリストになって3年。日本食の高級レストランを彩るアレンジメントを担当し、店頭ではお客さんのリクエストに応えて手際よくブーケを仕上げるが、まだまだ学ぶことばかり。今も志願して週1回は花の卸売市場へ。四季折々の花を覚えるため、午前4時から花を買いつけるバートさんに無給で同行している。 一緒に暮らしていた祖母の影響で花が好きになった之奈さん。2018年、結婚を機にオーストラリアへ移住し、2020年から現地でフローリストの職業訓練学校に通い始めた。しかし当時は英語がまったく話せず、授業を録音させてもらって何度も聞き直したという。課題も数日遅れながらすべて提出。そんな努力が報われ、卒業後はフローリストなら誰もが憧れるバートさんの店で働けることになった。だが、幼い頃の夢は叶えたものの、ブーケを作ってみても何度もやり直しを命じられ、勤務中に何も出来上がらなかったことも。働けることがうれしい反面、ここにいるべきかと悩んだときもあったという。
突然の結婚・移住の報告に、祖母は「もう帰って来るな」
大学卒業後に最初の結婚をした之奈さんは、二男が3歳の時に離婚し、実家に戻った。シングルマザーになり寝る間を惜しんで働く中、息子たちの世話は祖母がしてくれていたという。その3年後、現在の夫である雄介さんとの出会いが。雄介さんはオーストラリア在住だったが、惹かれ合った2人は遠距離で関係を築いていった。そして29歳のとき、結婚と移住を決断。現在は長男が日本に留学中で、雄介さん(42)と二男の煌河くん(13)の3人で暮らしている。 実は当時、雄介さんとの交際を隠していたため、両親と祖母にとって再婚と移住は寝耳に水の出来事だった。祖母には「もう帰って来るな」と言われてしまったという。 仕事で忙しかった父・之宏さん、母・絹代さんに代わって、ずっと子どもや孫の面倒をみていた祖母の百合子さん。之奈さんがオーストラリアに渡ると聞いたときには、つい厳しい言葉を口にしてしまったと振り返る。だが絹代さんはその言葉について、「当時、私には『それぐらい言っておかないと、という思いだった』と言っていましたね」と祖母の真意を明かす。