静岡県内でカメムシによる柿や梨、ミカンなど果樹の被害が拡大している。今年はエサとなるヒノキやスギの実が多く全国的に大繁殖しており、８月には県内の山中での調査で、平年の約４倍の個体が見つかった。台風１０号の風で果樹園へ飛来し、仲間を呼び寄せている可能性もあり、県は農薬散布などの対策を呼びかけている。 【写真】これは困る…カメムシによって大量に落下したミカン

果実が変形

カメムシに吸われ、黒ずんだ柿の実（静岡県磐田市で）

　「カメムシに実が吸われてボコボコ。傷んで落下してしまったものもたくさんある」。県西部の名産「次郎柿」を栽培する磐田市の柿農家柳沢重博さん（６３）は肩を落とす。約１０００本の柿の木がある農園では、すでに例年の２倍の被害を受けた。

　今月初旬に台風が通過した翌朝から急きょ防除剤を散布したが、「雨がやんだ直後を狙われて吸われたようだ。もう手遅れだった」と振り返る。防除剤は１回に約５万円と高額だが、例年の３倍の頻度で散布する予定だ。「１０月下旬の収穫まで被害の大きさが読めない」とため息をつく。

平年の４倍

　カメムシは山林のヒノキやスギの実をエサとして繁殖し、エサが枯渇すると果樹園などに飛来する。果実に針状の口を差し込んで汁を吸うため、果実が変形したり落下したりする被害が出る。

　県病害虫防除所の８月の調査では、実がついたヒノキの枝１０本あたりに付いていた平均数は１３・１匹で、平年の３・１匹を大幅に上回った。同防除所は「カメムシが山の中にひしめいている。相当の飛来数になるのでは」と予測する。すでに一部の農園では、ミカン１本の木に数百匹が群がり、大量に果実が落下する被害が確認されたという。

　被害急増の一因と考えられているのが台風だ。暴風雨とともに山を飛び出したカメムシは、果樹園でエサを見つけるとフェロモンを出して仲間を呼び一気に飛来することがある。長雨で農薬による初期防除が遅れたことも要因という。

　今年は全国的に被害が多く、農林水産省によると、１８日現在、３８都府県に警報と注意報が６１件発表され、過去１０年で最も多い。７月には鳥取県など３県で大発生が予測され、早急に防除措置を取る必要がある場合に出される警報も発表された。