ハイレゾって本当に広がるの?
ハイレゾは新しい音楽市場をつくり出す
音楽CDより情報が豊富で微細な音表現が可能なハイレゾ音源ですが、どのオーディオ機器でも再生できるわけではありません。繊細な音を再生するわけですから、機器側にも高品質・高性能が求められます。音楽CDとはデータ形式(フォーマット)が異なりますから、ハイレゾ音源の再生に対応したオーディオ機器、あるいはパソコンも必要となります。 オーディオメーカーが、このトレンドを無視するわけがありません。実際多くのメーカーは「ハイレゾ対応オーディオ機器」を発売し、話題を集めています。業界団体である日本オーディオ協会も6月、統一基準と推奨ロゴマークを発表しました。この12月には、日本オーディオ協会と米国家電協会が協力関係を発表、米国製品へのハイレゾロゴの供与も開始しています。 では、その「ハイレゾ」、実際の販売に貢献しているのでしょうか? 「ヘッドフォン祭り」の主催で知られる東京・中野のA&V製品販売店フジヤエービックに訊いてみたところ、「デジタルオーディオプレーヤー、ヘッドホンアンプといった特定ジャンルの製品には貢献している」とのこと。製品がハイレゾ対応かどうかが販売に影響しているかも訊ねたところ、「すでにハイレゾのよさを理解しているお客様のみに影響している」(フジヤエービック)とのことで、現状では幅広い層にアピールする製品カテゴリにまでは成長していないようです。 一方、ハイレゾ音源の販売は順調に伸びています。オーディオ機器大手のオンキヨーが運営するハイレゾ音源配信サイト「e-onkyo」に売上の状況を訊ねたところ、「2013年度同様、前年度比2倍の売上を2014年度も達成できる見通し」という回答を得られました。「2005年のオープンから2013年後半までに集めた楽曲は約3万だが、この1年で倍以上の7万曲に増加」(e-onkyo)という楽曲数の充実が要因と考えられますが、倍々ペースでの伸びが数年にわたり続いていることは、「ハイレゾ人口」の増加も影響していそうです。 オンラインストアなだけに、購買動向は数値化が可能です。概要を訊ねたところ、「ハイレゾ楽曲を購入する顧客は40~50代が半数ほどを占める」(e-onkyo)とのことで、かつてのオーディオブームを知る世代が市場をけん引しているといえそうです。ジャンルは「クラシックとジャズが売上の半分以上だが、楽曲数が少ない"アニソン"の曲数に対する売上がとても大きい」(e-onkyo)という回答もあることから、より若い顧客層が増えている様子もうかがえます。 CD販売の伸び悩みが伝えられる昨今ですが、「音質」という音楽の魅力の一面に強く訴えるハイレゾは、今後大きく伸びる余地があります。ディスク装置の容量あたり単価が年々下落していることもあり、消費者はかつてほど楽曲データの小ささを重視していません。他産業に見られる「質重視」へのシフトが、オーディオ業界のみならず音楽業界にも波及するのではないでしょうか。 (執筆=海上 忍)