ヒットしない要素ばかりだった映画「ゼロ・グラビティ」 製作のデイビッド・ヘイマンに聞く
どうやって「無重力」を再現したのか
この作品を作り上げるまでには相当な「逆境」があったという。それは地球への生還を目指したライアン(主人公の女性)の逆境と同じようなものだった、とヘイマンは笑う。 「見た時に無重力であるという、その状況を作り出すために必要な技術、どういうものがあればできるのか、が当初分からなかった」。キュアロン監督の書いた脚本は素晴らしいものだったが、それは今までの撮影上の多くの「規則」を破ったものだった。「12分、13分という長回しの間、ずっと無重力状態を作らなければならない。これは今まで全くやったことがないことだった」。 無重力状態を再現する撮影は、実に困難を極めた。監督や俳優の努力もさることながら、技術スタッフらの「発明」も成功への大きな要因だった。スティーブン・スピルバーグ監督やジェームズ・キャメロン監督も不思議がったという無重力状態の撮影はどのように行われたのだろうか。 それを実現するためには、ある大きな2つのひらめきがあったという。一つは「これを撮るために、実際に動かさなければいけないのはカメラであって、俳優じゃない」こと。サンドラら出演者を実際に逆さまにしたら、俳優の顔が重力の影響を受けてしまうからだ。 もう一つは、「本当のものは役者の顔だけにする」と思いついたこと。この作品は、ほとんどの部分が、実写とコンピューター・アニメーションの融合によって作られている。つまり、顔以外はコンピューター上で作られたのだ。ヘイマンは言う。「この2つの重要な決断が決まったら、今度はどうやったら顔の部分を一番うまく撮影できるのか、を考えた」。 その撮影方法は、「宇宙船の外」と「宇宙船の中」で異なる。 船外の撮影は、ライトボックスという4096個のLED電球をはめ込んだ箱が「発明」され、その箱と、カメラを設置したロボットなどを活用した。ライトボックスは幅3メートル、高さ9メートルの大きさで、撮影では「カメラが回れば照明も回る」といったように、照明、カメラ、ロボットなどが完全に同期された状態で行われた。 一方、船内の撮影は、12本のワイヤーで俳優を吊り下げ、舞台版「戦火の馬」でも活躍した「操り人形師」たちによって、自由自在に動かすことができたのだという。