ヒットしない要素ばかりだった映画「ゼロ・グラビティ」 製作のデイビッド・ヘイマンに聞く
12月13日から日本公開されている映画「ゼロ・グラビティ」。地上600キロの宇宙空間に放り出された女性の地球への生還を描いたこの作品は、世界46か国で興行ランキング1位を記録し、世界での興行収入は600億円を突破した。ストーリーの主題は宇宙からのサバイバルで、無重力空間を精密に表現した映像に注目が集まるが、つらい過去を引きずって生きる主人公の女性の内面描写も見どころの一つ。出演者は、サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの2人だけという思い切ったキャスティングも異色だ。アルフォンソ・キュアロン監督と共に、この話題作を作り上げたプロデューサーのデイビッド・ヘイマンに、作品に込めたメッセージや映画の手ごたえ、撮影の苦労などを聞いた。
作品に込められたメッセージ
「ハリー・ポッター」シリーズ全8作品の製作を務めたことでも知られるデイビッド・ヘイマン。「ゼロ・グラビティ」のテーマは「逆境を乗り越える」ことだったと語る。それには、脚本を書いたキュアロン監督を取り囲む当時の状況も影響していた。 「当時、監督は仕事面とプライベート面とで、さまざまな問題を抱えていた。そういう状況の中で、『逆境に立たされた』というテーマで映画を作りたいと考えた。まずスタートはキャラクター、そしてテーマが決まり、その後で場所が決まった。場所を決めるときに、とにかく人間が孤独であり、また逆境に立たされるような極限状態である状況を考えた」。宇宙からの生還というインパクトあるストーリーだが、意外にも宇宙という舞台設定は最初に決まっていたわけではなかった。それはあくまで、主人公の「逆境」や「孤独」を際立たせるためのものだったようだ。 サンドラ・ブロックが演じる主人公は、女性メディカル・エンジニアで、ミッションを遂行するためにスペースシャトルに乗り込んでいた。彼女は過去にプライベートでつらい過去を持ち、半ば人生をあきらめて生きていた。しかし、突如襲いかかってきたスペースデブリ(宇宙ごみ)によって、宇宙空間に投げ出されてしまう。 「彼女は宇宙の中に舞って死んでしまうのか? もう一つの選択は『生きる』、つまり地球を選ぶということ」。彼女は結局、「生きる」ことを選択し、そのために全力を尽くして戦うことを選んだ。それは「生まれ変わる」ことでもあるという。「この映画は、そういった逆境に立たされて、その時に人間は新しく生まれ変わること」を表現したのだ。 「生まれ変わり」というテーマを象徴的に表すのがラストシーンだ。そこでは「重力」というものが暗喩的に描かれている。映画の原題である「GRAVITY(重力)」がのしかかって来る。ヘイマンは解説する。「そのとき、今度は重力が、主人公にとって別の意味で逆境となってくる。それに対しても彼女は笑うことが出来たんだ」。