コロナ死者は年3万人、大半が高齢者 シニアへの定期接種スタート 100歳時代の歩き方
10月から、65歳以上の人らを対象とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種が始まった。新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行して約1年半。予防に向けた意識は緩みつつあるが、一部の高齢者や基礎疾患を持つ人らにとっては、感染すれば重症化リスクをはらむ病気であることに変わりはない。専門家らは、社会全体が予防に向けた意識を持ち続ける重要性を指摘する。 【表でみる】10月の新型コロナウイルス接種 新型コロナ流行の第1波の頃から、診療を続けてきた「多摩ファミリークリニック」(川崎市)。今夏の第11波を経た今も、来院する患者の姿が見られる。 大橋博樹院長によると、外来を訪れるコロナ患者の多くは、喉の痛みや咳など一般的な風邪症状を訴えて受診。37~38度程度の発熱があっても、対症療法により1~2日ほどで解熱し、快方に向かうという。 一方、罹患後数週間~数カ月たっても「痰の絡む咳が続く」「香りや味を今までのように感じられない」と訴える患者もいる。訪問診療で診ている寝たきりの高齢者らが感染すれば、入院が必要になることもあるとする。 「症状が重くなる人は本当に少なくなった。それでも普通の風邪とはやはり違う」。大橋院長は新型コロナの診療の現状をそう語る。 東京都小平市にある「むさしの病院」でも、コロナ患者の入院は絶えない。鹿野晃院長は「流行株の弱毒化により、肺炎が急速に悪化してエクモ(人工心肺装置)が必要になるといった人はほとんどいなくなった」とする一方、「一部の高齢者や基礎疾患を持つ人が感染すれば、重症化する恐れがあることは変わらない」と話す。 救急搬送されてくるコロナ患者は感染を機に、咳や熱などで体力が奪われて飲食ができなくなったり、誤嚥性肺炎を併発したりして全身状態を悪化させたケースが目立つ。ワクチン接種を受けてこなかった、あるいは、前回接種から1年以上たって免疫が落ちている場合、重症化の傾向がみられる。こうした人の中には、感染により重い肺炎に陥る人もいるという。 厚生労働省の人口動態統計によれば、新型コロナの死者は5類となった昨年5月~今年4月の1年で約3万2000人。同時期の季節性インフルエンザの死者(約2200人)の約15倍で、大部分を高齢者が占めた。