「枯れては咲く」住み継ぐことのできる街へ 高蔵寺ニュータウンの今(下)
住民同士が勉強会や相談会
初代理事長は元愛知工業大学建築工学科教授の曽田忠宏さん。 「このままでは高蔵寺がゴーストタウンになる。世代交代で『住み継ぐ』ことのできる街にしよう」と呼び掛けたそうです。数十人の住民が集まり、翌年からNPO法人化しました。 当時はまだ行政に危機意識がなく、まずは住民側から目指す街の姿を示そうと「マスタープラン」づくりに着手。都市と農村が共存する「NEO+ECO」を意味する「NECOガーデンシティ構想」をまとめました。 現理事長の藤城栄一さんによれば、構想は「未完」の状態。しかし、困りごとを気軽に話し合える「おせっかい基地」づくりや、空き家の積極的な活用、未利用の県有地への福祉施設の誘致など、後のプロジェクトや政策につながるアイデアはそろっていたように見えます。 実際の活動としては、「どんぐりsカフェ」と銘打った住民同士の学習会が始まりました。センター地区の商業施設の一画にある交流スペース「東部ほっとステーション」を会場に、月1回のペースで開催。介護や医療、国際交流などさまざまなテーマで講師を招き、新旧や内外の人たちとの交流の場ともなっています。 ニュータウンに暮らす人たちに対する具体的な生活支援の場も設けられました。 「すまい相談」は、建築関係の仕事をしてきた寺島さんら一級建築士のメンバーがリフォームや耐震診断などの相談に対応。「くらし相談」は大学教授として住居学を専門にしていた藤城さんを中心に、社会福祉士や民生委員、心理カウンセラーの相談員が、介護をはじめ生活全般の相談に応じます。 どちらもまだ周知不足で相談件数は多くないそうですが、「すまい相談」は春日井市ニュータウン創生課と共催できたときは相談件数も増加。「くらし相談」は昨年から場所を戸建てエリア内の民家に移し、「大人のたまり場」として気軽なおしゃべりもできる雰囲気にするなど、工夫を重ねています。 「これからも市や他団体との連携を強めていきたい」という藤城さん。しかし、「まちづくりは5年先、10年先にならないと成果が見えてこない。どうやって活動を継続していくかが課題。市もようやくニュータウンの課題に振り向いてくれたが、もっと住民の声を反映するシステムをつくってもらわなければ」とも話します。