[特集/絶対無敵!レヴァークーゼン 02]レヴァークーゼンはなぜ強い!? X・アロンソがかけた“相対的な速さ”という魔法
昨季はスタートダッシュに失敗し、開幕からわずか2ヶ月で指揮官を解任したレヴァークーゼン。そして、チームの未来を託したのがシャビ・アロンソだ。 [映像]第21節ではバイエルンに3-0で勝利し、優勝へ大きく前進した 当時トップチームでの監督経験がゼロだったX・アロンソだが、現役時代から定評のあった鋭い戦術眼は指導者になっても健在だ。あれよあれよと強固で負けないチームを作り上げていく。 その結果、昨季は最終的にしっかりと6位フィニッシュへ導いており、今季もその勢いそのままに公式戦で無敗街道を突き進む。絶対王者バイエルンの連覇記録をストップし、ついには欧州の連続無敗記録をも更新。さらには三冠の獲得も目の前に迫っているのだ。いったいX・アロンソはレヴァークーゼンにどんな“魔法”をかけたのか。
レヴァークーゼンの「速さ」は単なる速度の速さではない
レヴァークーゼンの快進撃を支えている戦術的な特長をあげるなら、「速さ」と「コントロール」だと思う。レヴァークーゼンのビルドアップは3バック+2ボランチが基本。この5人が近い距離で繋がることで相手を引き寄せ、それによって前方5人(トップ、2シャドー、2ウイングバック)が使えるスペースを広げる。後方のパスワークを寸断しようとして守備側のプレッシング人数が増えるほど、他の空きスペースが大きくなる仕組みだ。 いわゆる「擬似カウンター」に似ていて、例えばブライトンなどもこうしたビルドアップの形を持っているが、形としてそれを行っていないところがレヴァークーゼンらしさだろう。 攻撃側の時間と場所を制限することがプレッシングの要諦だが、それを逆手にとっている。かつてはジダンが人間磁石としてほぼ単独でこれを行い、全盛期のバルセロナはシャビ、イニエスタ、ブスケッツ、メッシの近距離パスワークで絶大な効果をあげた。
この手法が成立すると、いつでもカウンターアタックができるので速く攻め込む必要はない。集まった相手を束にして置き去りにできるのだが、そのかわり速くプレイしなければならない。 速く攻め込む。いわゆる「縦に速い攻撃」は単純に相手ゴールへ到達するまでの時間だけが問題にされている。ディフェンスラインの裏のスペースへ蹴り、全速力でこれを拾ってシュート、ラストパスというのが典型的なイメージだろうか。これは単純な速度としての速さである。 一方、レヴァークーゼンが行っている速いプレイとは、速度ではなく相手との相対的な速さだ。人から人へとパスがつながり、あれよという間にゴールに迫っている。見た目はそこまで速くないし、毎回全力疾走しているわけでもない。しかし、相手は置き去りにされている。