絶滅コットンを救え 高校生が無農薬で栽培、クッション製作 岡山
合言葉は「絶滅コットンを救え!」。かつて岡山県内で盛んだった綿花栽培に再び光を当てようと、同県立興陽高校(岡山市南区藤田)の生徒たちが、校内で農薬や化学肥料を使わずに栽培した綿花でクッションを製造するプロジェクトに取り組んでいる。来年1月末に東京で販売する予定で、生徒たちは「岡山の綿花が注目されるきっかけになるよう、存分に魅力を伝えたい」と意気込んでいる。 【写真】生徒たちが栽培した綿花 岡山では、江戸時代に米の増産のため瀬戸内海沿いを干拓したが、塩害が発生した。そこで塩分に強い綿花を盛んに育てるようになったことが、後の繊維産業の発展につながった。ただ、明治時代以降は綿の輸入が始まって綿花栽培が急速に衰退し、現在は国内自給率がほぼ0%とされる。興陽高校は、そんな綿花に「岡山の歴史に根ざし、地元のPRにもつながる素材」と着目。産業教育の一環で、2023年5月から校内で栽培に取り組んでいる。 生徒が植えた種は、新型コロナウイルスの影響で利用が落ち込んだ岡山空港を活性化させようと、県内の官民約200団体でつくる「空路利用を促進する会」が、22年に空港内で栽培した綿花から採取したもの。昨年は譲り受けた種を農業機械科と農業科の生徒が校内の農場に植え、90リットルの袋10個分ほどの綿花の収穫に成功。お守りやがま口のポーチなどを作って地域のイベントや文化祭で販売した。 プロジェクト2年目の今年は被服デザイン科の生徒が加わって栽培から製品化までを校内で完結できるものを考え、クッションを製作することになった。種は前年に栽培した綿花から採取したものを使い、作付面積は前年の倍の6アールに拡大。無農薬にこだわった分、葉に虫が付きやすく、農業機械科の森遵成さん(2年)は「カエルやコオロギも多くて世話が大変だった」。それでも、出席番号順で土日や夏休みも関係なく農場に行き、水やりや草抜きなどに精を出した。 その結果、農業科の幸田智樹教諭は「昨年の3倍ほどの収穫が見込める」と胸を張る。収穫した綿花から種や虫、ごみなどを取り除いて乾燥させたものを布袋に詰めて、40センチ角のクッションを作る。「3種類の試作品を作って実際に抱いてみて、一番心地よい綿の量を探って作った」と、被服デザイン科の中島遙花さん(3年)。外袋のデザインは、当初は県特産のデニム柄などの案もあったが、オーガニックコットンの生地を使い、目に優しい白と淡い赤、淡い緑の3色にした。 雲に包まれたような心地よさと自然派素材から感じる安心感から「綿雲クッション」と名付けられたクッションは、来年1月31日に東京都港区にある県のアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」で、1個3300円で販売する。農業科の日笠花実さん(3年)は「農薬、化学肥料を使っていない安心の商品なので、自信を持って売りたい。岡山のアピールをどんどんしたい」と力を込め、高月桃子さん(2年)は「クッションを売ることでほぼ絶滅している綿花栽培に光が当たり、少しでも興味を持ってもらえる人が増えたらうれしい」と胸を躍らせている。【平本泰章】