<春に挑む・’23センバツ海星>/上 練習の「質」重視 競り合い、推進力に /長崎
7年ぶり6回目のセンバツ出場となる海星の長崎市宮崎町にあるグラウンドのベンチには、選手名が書かれたホワイトボードが掲げられている。1列目にレギュラー、その下に2番手、3番手の名前が書かれ、加藤慶二監督(48)がプレーを見ながら小まめに「序列」を入れ替える。 2022年秋の県大会、九州地区大会の全8試合に出場した平尾幸志郎選手(2年)は「少しでも気持ちが入っていないプレーや悪いプレーをすれば、レギュラーを奪われる」と危機感を抱く。 この激しい競争が、チームの推進力になっている。ともに1年の田中朔太郎、永田晃庄、池田陽翔(はると)の3選手は秋の九州地区大会で内野手のレギュラーをつかみ取ったが、その約2カ月前の夏の甲子園ではベンチ入りすらできずスタンドから声援を送っていた。 九州地区大会で2番を務めた永田選手は「もっと練習して、センバツでもレギュラーを目指す」と意気込み、4番に座った池田選手は「部内で一番、バットを振っている自信がある。夏の甲子園のスタンドから見た先輩たちが輝いていて、『自分もプレーしたい』という気持ちが強くなった」と振り返る。 その池田選手に、スタメンを奪われた井坂陸翔選手(2年)は「センバツではスタメンに戻れるよう、打率を今の2割5分から4割に引き上げる」と誓い、毎日1時間の素振りを日課にしている。 チームが重視するのは練習の「質」だ。全体練習は平日で約3時間、休日で約5時間と強豪校としては短い。その分、足りない部分を自主練習で補うことが求められる。加藤監督は「言われて練習するようでは身にならない。必要なことは自分で考えて、グラウンドに来るまでに終わらせておくことが当たり前」と話す。 こうした練習で磨いた集中力で、九州地区大会では1点差の接戦を制して4強に食い込み、センバツの切符を手にした。 「1年生は力をつけて虎視眈々(たんたん)とレギュラーを狙い、2年生は危機感を持っている。『負けたくない』と競い合うことで、チームがよりレベルアップしていく」。加藤監督は選手たちの更なる成長を信じている。【松本美緒】 〔長崎版〕