アイルランド首相、有権者から逃げる動画が拡散 総選挙直前に支持率低下
(CNN) アイルランド史上最年少の首相、サイモン・ハリス氏(38)は、29日に行われる総選挙(定数174)での勝利はほぼ確実だと思っていたかもしれない。 【写真】アイルランド党を支持する選挙ポスター TikTok(ティックトック)の首相とうたわれたハリス氏はこの7カ月間、若い世代に不満を理解していると伝え、安心させようとしてきた。同国の若年層は生活費の高騰とは別に、長引く住宅危機などの問題に不満を抱えている。 ハリス氏率いる与党・統一アイルランド党は世論調査で上位につけており、計画通りに進んでいるように見えた。しかし先週になって、ハリス氏が明らかに動揺した様子の介護士から逃げる動画が拡散した。介護士は遊説中のハリス氏に質問をしようとしていた。 ハリス氏がこの介護士に連絡を取り、公式に謝罪したにもかかわらず、ハリス氏の遊説を追ってきたアイリッシュ・タイムズ紙の記者、ジェニファー・ブレイ氏はCNNに対し、この拡散した失態は間違いなく今回の選挙活動の決定的瞬間になったと語った。統一アイルランド党の幹部は「投票先を決めていない有権者がこの動画を見たら、リーダーとしての彼の誠実さを疑うだろう」とただちに懸念を示したという。 これ以前でさえ、中道右派の統一アイルランド党は苦戦しながら14年間にわたり政権を維持してきた。最近の選挙では3党による連立政権が誕生している。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのデビッド・ファレル教授によると、同党が29日の投票で勝利すれば、「アイルランド政治における新記録」を樹立することになる。 しかし、政治評論家らは、同党が現職の呪いの犠牲になる可能性が非常に高いと述べている。世界中の与党は今年の選挙でその地位を維持することができなかった。 アイリッシュ・タイムズが25日に発表した世論調査によると、選挙のわずか5日前に統一アイルランド党の支持が6ポイント低下した。3大政党の共和党、統一アイルランド党、シンフェイン党の支持率はそれぞれ21%、19%、20%。残りの40%を小政党と無所属が占める。 アイルランドの政治家が票を争う重要な舞台の一つはSNSだ。ハリス氏はティックトックやインスタグラムなどを活用していることを自負している。しかしSNSの専門家は、ハリス氏の対抗馬の一部について、同氏よりも活用度合いはさらに高いと指摘する。 同性婚の合法化や中絶禁止の撤廃など、最近のアイルランドの歴史を特徴づける進歩的な社会変革の先頭に立ったのは若い有権者たちだった。 ファレル氏は、今回の選挙によって誕生する政権について、異なる種類の国を引き継ぐことになるとの見方を示した。