「農業関係の仕事していた」「似た人見たとの情報複数」…拉致可能性排除できない66人、北朝鮮での目撃情報など初公表・特定失踪者問題調査会
民間団体「特定失踪者問題調査会」が、北朝鮮に拉致された可能性が排除できない66人の失踪者について、これまで入手した北朝鮮での目撃情報などを初めて集約し、公表した。新潟市西蒲区出身の大沢孝司さん=失踪当時(27)=ら新潟県関係4人の情報も含まれている=表参照=。調査会は「情報の信頼性は千差万別だが、世論の喚起や新しい情報の掘り起こしにつなげたい」としている。 【表】新潟県関係の4人の公開された情報 今回の公表は、拉致や特定失踪者の問題で進展がない中、現状の打開につなげるのが狙い。情報源は脱北者や北朝鮮にいたことがある日本人らで、情報の多くは北朝鮮での目撃証言が占める。 大沢孝司さんの情報は「北朝鮮で農業関係の仕事をしていたが、すでに引退している」とある。孝司さんは県佐渡農地事務所の職員だった1974年2月、佐渡市で行方不明になった。 孝司さんの兄昭一さん(88)は、数年前に調査会から「政府筋の情報」として聞いたという。昭一さんは「弟は今78歳。引退と言えば、70歳くらいの時か。順応性があるのでそれなりの生き方ができているのではないか」と受け止める。孝司さんについては、民主党政権で拉致問題担当相だった松原仁氏が退任後の2015年に「間違いなく拉致だ」と証言していた。 1998年4月に新潟空港から韓国へ出国した記録を最後に行方が分からない中村三奈子さん=失踪当時(18)、長岡市=には「北朝鮮にいる」という情報がある。調査会によると、個別の情報ではなく、北朝鮮にいる複数名が記されたリストの情報だという。 何度も韓国に渡り、手掛かりを探してきた三奈子さんの母クニさん(81)は「情報が事実ならば、怖いし、なおさら早く解決してほしい」と話した。 1965年3月に糸魚川市で失踪した藤田進さん=失踪当時(17)、糸魚川市=も「北朝鮮にいる」という情報がある。60年9月に東京で行方が分からなくなった宮沢康男さん=同(17)=は「北朝鮮で似た人を見た」との情報が複数ある。 調査会の荒木和博代表は 「信頼性は濃淡があるが、公表した方が未遂事件などの新しい情報が集まり、拉致問題の全体像を明らかにすることにつながる」と説明した。調査会は拉致の可能性を排除できない人は約470人いるとしている。 特定失踪者の家族は11月19日、林芳正官房長官と首相官邸で面会する見通し。調査会が集約した情報を林官房長官に渡すことにしている。情報の一覧は調査会のウェブサイトで閲覧できる。