なぜ「ガソリンスタンド」減少? 30年で“半分以下”の理由は? 燃費向上で給油量減が要因? 今後存続するためには何が必要なのか
地域ごとの状況も見てみましょう。 資源エネルギー庁では、ガソリンスタンドの数が3カ所以下の市町村を「SS過疎地」として定義。 2024年10月11日に発表された最新のデータ では、計372市町村が該当します。 内訳は以下のとおりです(2024年度末のデータ。かっこ内は2023年度末 の数)。 0カ所:10町村(8) 1カ所:96町村(97) 2カ所:122市町村(114) 3カ所:144市町村(139) 具体的な地名を挙げると、東京の小金井市や神奈川の逗子市といった比較的、都市部に近い市町村の名もあります。
本当にあるの? 公設民営のガソリンスタンドとは?
SS過疎の場所に住んでいればガソリンや灯油の入手に困ってしまうと消費者は思うでしょうからできるだけ過疎はなくしてほしいものです。 一方で、資源エネルギー庁としてSS過疎対策を講じる理由は、何なのでしょうか。 「地域の燃料供給体制の維持が不可欠であることが1つ。 もしガソリンスタンドがなければ、灯油配送が滞るなどで、自力で買い物に行けないいわゆる『交通弱者』に該当する人がさらに困ってしまう状況にもなりかねません。 さらに、災害時においてガソリンスタンドは重要な燃料供給拠点となります。 緊急車両や作業をするクルマにとって不可欠な拠点ですし、停電時に避難所や医療機関などが暖房を利用する際にも燃料が必要です。 こうした国民の皆さんの安全・安心を守るため、SS過疎対策に取り組んでいます」(前出・担当者)
それほど大切な場所であれば公営のガソリンスタンドをつくれないのか、と思う人もいるかもしれません。 こうした意見に近い取り組みが、長野県売木(うるぎ)村でガソリンスタンドが維持された事例です。 同村はかつて地元業者が営業していた村内唯一のガソリンスタンドを残すため、観光協会と村民有志で運営を続けてきました。 しかし、そのガソリンスタンドもタンクの入れ替え時期が迫るなどで存続の危機に。 そこで、SS過疎地対策検討支援事業の補助金を得て新たに建設し、運営は民間で行う「公設民営」のガソリンスタンドが、2020年から本格営業を開始しています。 「建設などにかかるコストを下げるため、タンクを地下ではなく地上に設けたガソリンスタンドです。 これは実証段階のもので、国内でも売木村のガソリンスタンドだけにあるものとなっています」(前出・担当者) また、既存のガソリンスタンドを維持していくため、前出の『SS過疎地対策ハンドブック 』にはカフェやコインランドリーなどを併設する経営多角化がガソリンスタンド経営者に提案されています。 もっとも、「ワンオーナー・ワンSS」が少なくない状況では、多角化するため人員を確保するなどの課題もあるといいます。 ※ ※ ※ なお、災害時の燃料供給拠点になるという話がありましたが、担当者は「災害時だけでなく平時からもお近くのガソリンスタンドを利用していただき、関係性を築いていただきたいと思います」と語ります。 普段は値段でガソリンスタンドを選び、有事の際だけ地元のガソリンスタンドに頼ってしまうと、経営の持続性が失われてしまうからです。 利用する私たち自身でガソリンスタンドと地域を守っていくためにも、次の給油は近所に行ってみるのもいいかもしれません。
藤麻迪