糸井と新外国人獲得も一塁が空いた阪神の不可解補強
阪神の今オフの補強、編成方針が不可解でならない。こんなことを書くと、また某球団幹部から「こちらはビジョンを持って編成をしている。そこを取材もせずに勝手な意見だけを書かないでもらいたい」と、お叱りを受けそうだが、行き当たりバッタリの補強を続け、一塁が空白となる失態を演じているのである。 チームの内外から「ゴメスを置いとけば良かった」の声が聞こえてくる始末である。 オリックスからFA宣言をした糸井嘉男(35)の獲得に際して、当初、糸井は右翼、福留孝介(39)の右翼から一塁へのコンバートが考えられていた。そのため勝負弱かったが、22本塁打を放っていた一塁のゴメスとの契約を更新しなかった。一塁は、コンバートする福留と今季育成から支配下登録され11本を放った原口文仁(24)の2人でカバーしようという構想だった。 だが、11月に入ってから金本監督が福留の意見をヒアリングした結果、福留が右翼を希望したため、糸井は中堅、福留は右翼という布陣で、来季スタートすることが決まったのである。 つまり、近代野球において、足、肩がなくても長打が打てる和製クリーンナップ、あるいは外国人の定位置とされる一塁が、ぽっかりと空いてしまったのだ。必然、金本監督が「4番もあるかも」と評価する原口が一塁手の一番手候補になるだろうが、彼自身は「キャッチャーで勝負したい」というこだわりを口にしている。実際、今季も捕手で68試合、一塁では9試合しか出ていない。 本来一塁は一発のある新外国人をはめこみたいポジションである。 セ・リーグの他球団の一塁事情を見ればよくわかる。優勝した広島は、MVP獲得の新井貴浩にエルドレッド。巨人は阿部慎之助、ヤクルトは今季故障で試合数が減ったが畠山和洋、中日はビシエド、横浜DeNAはロペスだった。 しかし、阪神が早ければ今週中にも正式契約するメッツをFAとなったエリック・キャンベル内、外野手(29)は三塁手である。一塁も守るが、この助っ人には一発はなく、広角に打ち分けるアベレージヒッタータイプ。メジャー3シーズンで合計7本しかホームランが打てていない“ピストル”が一塁手では、チーム編成上魅力はない。 今季のチーム本塁打数90本は、中日の89本に次ぐリーグ5位。チーム最多は22本のゴメスだったが、そのゴメスは消え、今季、そのゴメスに続いたのは、福留、原口の11本。本来、22本を打ったゴメスの穴を埋めて余るほどの本塁打が打てる右の大砲タイプの新外国人を連れてこなければならなかったのだが、当初、一塁ではなく今季固定できなかった三塁手を探していたため、大砲のリストアップにも制限があった。 実は、中日が契約したドジャースのアレックス・ゲレーロ内野手(30)は阪神がリストアップしていた候補の一人だった。三塁だけでなく、一塁はもとより、内、外野のできる大砲タイプ。2015年には、メジャーで代打の切り札として11本を放っているキューバ人で、この6月に解雇されると、阪神はシーズン途中に獲得に動いた。だが、結局、契約は見送り、オフになってからは予算の関係でうまく交渉が進まず、ドジャースのロブ・セゲディン内野手(27)に照準を変えたが、ド軍がFAにしなかったため獲得できなくなり、次の候補として、元楽天のケーシー・マギー内野手(34)との交渉に動いたが、マギーも巨人と先に話がついていて、結局、後手後手を踏み大砲タイプとは、程遠いキャンベルに落ち着いた。 その新外国人獲得の動きの最中に、糸井の獲得が決まり、福留の本格的な一塁コンバート案が消えた(シーズン中に何試合かは守る可能性はある)。新外国人を右の大砲タイプの一塁手に照準を変えて、もう一度ゼロから探し直しても良かったはずだが、もう手遅れだったのか、フロントはそういう動きをしなかった。