糸井と新外国人獲得も一塁が空いた阪神の不可解補強
確かに三塁手も、今季は新外国人のヘイグが結果を出せず、固定できなかったポジションである。だが、ここは、ドラフト1位指名した大山悠輔も三塁手だし、なんとか日本人で補える。新外国人を右の三塁手でなく、一塁手で探すならば、求める大砲候補はもっと増えたはずである。 メジャーのフロントオフィスには、常にボードに全ポジションに名前が書かれ、どう編成するかのチームビジョンが確認、共有されている。来季、誰をどこに配置するか、もっと言えば2年後、3年後、5年後に誰をどこに配置するかのビジョンまでフロントは現場と意見を交換しながら描いておかねばならない。 糸井の獲得をチーム方針として決めたならば、金本監督だけに任すのではなく、フロントは糸井が入ることで起こりうるチーム内シャッフル、新ポジション構想をしっかりと固めた上で、新外国人選手の置き場所、補強ポイントを検討しなければならなかったのだ。 このままでは、一塁が空くだけでなく、せっかく今季、金本監督が“超変革”の名のもとチャンスを与えた中谷将大(23)、江越大賀(23)、横田慎太郎(21)、板山祐太郎(22)らの出場機会も摘まれる。おそらく中谷、板山あたりには、その空いた一塁にチャレンジさせるのだろうが、付け焼刃的で、そこにチームビジョンはない。今からでも、もう一人追加で一塁手の新外国人を獲りにいくべきだが、編成予算も限られているため、その動きはまだ見られない。 不可解補強が起きた原因は、すべて準備不足に尽きる。 もっと早い段階からフロントは金本監督と意見交換をしながら、福留や鳥谷のヒヤリングに協力して来季のポジション構想を固めておくべきだったのだ。そうすれば、保険としてゴメスを置いておく手段も考えられたのかもしれない。ストッパー候補に新外国人のロマン・メンデス投手(26)を獲得、投手陣のウイークポイントの補強は、きっちりと終え、今季パ・リーグのベストナインに選ばれた糸井もチームに加わったが、新たな不安を抱えたまま阪神は「挑む」というスローガンを掲げた勝負の来季戦いに突入せねばならなくなった。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)