巨大テック企業の「レイオフの嵐」が従業員とのパワーバランスを変え始めた…Z世代エリート学生たちは何を選択するのか
いま、米Z世代エリート大学生の間で起きていること
政治と組織の関わり方について、Z世代を中心とする感度の高い世代はどのように受け止めているのでしょうか。アメリカの大学で今起きていることをもとに考察します。 現在、アイビーリーグ(米国の政財界・学界・法曹界を先導する卒業生を数多く輩出するアメリカ合衆国北東部にある8つの私立大学の総称)をはじめとしたアメリカの多くの大学キャンパスで、イスラエルとハマスの紛争に関連した抗議活動が進んでいます。 活動の一環として、大学キャンパス内での集会、座り込み、野営などが行われ、一部の大学では、警察との衝突による逮捕者の発生や、学生に対する懲戒処分にまで発展しています。 例えば、コロンビア大学では大規模な逮捕が行われ、抗議活動の野営地が解体されました。 反ユダヤ主義的な事件も数多く報告され、これがユダヤ人学生の安全にも影響を及ぼし、大学という学びの場にも大きな緊張を生んでいます。こうした事態が、学問の自由、言論の自由、政治活動に対する大学の適切な対応について、広範な議論を巻き起こしているのです。 このことから、政治や世界情勢に関して、若い世代も高い意識や関心を持っていることがわかります。そして、この流れはシリコンバレーの企業にも起きています。
グーグルの2つのオフィスへの「突撃」が象徴する転換
今年4月、親パレスチナ派のデモ隊がグーグルの2つのオフィス(ニューヨーク及びカリフォルニア州サニーベール)に押し入り、イスラエル政府との12億ドルのクラウド・コンピューティング契約から手を引くよう要求しました。 しかし、グーグルが彼らの要求を受け入れることはなく、代わりに警察を呼んだのです。そして、座り込みが始まってから10時間後、抗議者たちは不法侵入容疑で逮捕され、その数日後には事件に関わった少なくとも28人のスタッフが解雇されるという出来事が起こりました。 この事件に対し、CEOであるサンダー・ピチャイ氏は、従業員へのメッセージの中でこう発信しました。 「私たちには活気に満ちたオープンなディスカッションの文化があり、それが素晴らしい製品を生み出し、素晴らしいアイデアを行動に移すことを可能にしている。それは守るべき重要なことだ。 しかし、会社はあくまでビジネスの場であり、同僚を混乱させたり、危険を感じさせたりするような行動をとったり、会社を個人的なプラットフォームとして利用しようとしたり、混乱を招くような問題で争ったり、政治的な議論をしたりする場所ではないということは明確だ」 このように、コインベースの決定から数年後、グーグルもついに「政治とビジネスを切り離す方針」と解釈できる声明を打ち出すようになったのです。 これまで従業員の声に耳を傾けてきたグーグルですが、業務を妨げる行動や内部での政治的議論に対して、厳しい立場を取るスタンスに転換したことは、象徴的な出来事です。企業が社会的・政治的問題にどのように関与すべきかについて、業界全体の見直しが急進していることを示唆しています。 ピチャイ氏はまた、手紙の中でAIの未来を説き、生成AIを中心とした新しいプロダクトやサービスを作って提供するために、チーム一丸となってより注力していく必要があると説明しています。「我々は、世界中のすべてのユーザーに役立つ、客観的で信頼される情報提供者となる義務がある。それが他のすべてに優先することであり、それを反映した集中力をもって行動することを期待している」と述べ、プロダクトを正しく作って届けるという会社の使命に集中しよう、と呼びかけています。