女性皇族の著書が発売3ヵ月で30万部! 彬子女王殿下によるオックスフォード留学記大ヒットの舞台裏
また、彬子女王殿下が留学記を書くことになった経緯が、父宮様への「特別寄稿」の中で記されている。 オックスフォード大の博士課程へと進むために、父宮様に、留学の延長をお願いした際に《出された条件の一つが「留学記を出すこと」だった》という。 《長期間海外に出て公務をしない以上、それを支えてくださった国民の皆さまに対して、皇族としてきちんとその成果を報告する義務があると考えておられたからだ》と当時の彬子女王殿下は受け止めたようだ。 寛仁親王殿下は’12年に薨去され、残念ながらその留学記を目にすることはできなかった。 さらに、この特別寄稿では彬子女王殿下が幼稚園のころに作られた「父へのプレゼント」についても触れられている。それは折り紙で作ったお財布で、中には硬貨と思しき丸く切り抜かれた紙と、紙幣と思しき四角く切り抜いた紙が入っているものだった。プレゼントして25年以上の時を経て、それが寛仁親王殿下のお財布から出てきたのだ。 「父宮様とのエピソードはほかにもいくつか出てきますが、殿下と父宮様との深い心のつながりを感じさせるエピソードに涙がこぼれました。『Voice』連載時の編集担当も、その当時、幼い娘がいたこともあって、その原稿を読んだ感想を殿下に伝えるときに、感動で声がふるえてしまったらしく……。 打ち合わせをさせていただいたときも、応接室に父宮様の写真がたてかけてあったのが印象的でした。今もつねに見守っていてくれる特別な存在なのだと思います」(中村さん) ◆新しいエッセイ集の可能性は!? 出かけるときは必ず側衛官がつくという環境下で育った彬子女王殿下。《生まれて初めて一人で街を歩いたのは日本ではなくオックスフォードだった》というのだから、映画『ローマの休日』の物語を思い起こす読者もいたのではないか。 ネットで格安航空券を買うことも、毎日の自炊生活もオックスフォードに来てトライされたようだが、やはり最大のチャレンジは、博士号取得のための研究活動になるのだろう。 《もう二度と書きたくない》と、博士論文のつらさを本書では語られている。しかし、そうしたときにこそ、本書のタイトルでもある「赤と青のガウン」(博士課程を成し遂げた者だけが袖を通すことを許される特別なガウン)がふと頭に浮かび、当初の《自分に立ち返らせてくれる「目標」》になっていたとも記されている。 このオックスフォード大学のマートン・コレッジでの5年間は、彬子女王殿下にとって、かけがえのない日々だったに違いない。 続編を待ち望む声もあるそうだが、留学記である以上、現時点ではありえないとお考えのようだ。 「まだこの本の存在を知らない方もおられる。一人でも多くの方にこの本を届けて、願わくは、国民的ベストセラーに、と秘かに思っています」(中村さん) と言いながらも、 「現在、海外出版やオーディオブック化の相談も、殿下とは進めています。次回作を当社が出すのは、愛読者に対するお礼になるでしょうし、それが、編集者として果たすべき責任でもあると、今回の編集チーム3人で共有しているんです」(中村さん) とも言う。新しい本に出合える日は、そう遠くないのかもしれない。
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