長期入院の寝たきりの高齢者が点滴や薬を減らしたら、起きて歩き出した!? キケンすぎる高齢者の”薬漬け”
副作用をまた薬で治す最悪のパターン
高齢者の薬が増えてしまう背景には、臓器別診療の弊害があります。現代の医者の多くは自分の専門分野の診療には長けています。しかし、臓器ごとに専門分野が分かれていますので、専門外の診療についてはシロウトなため、医者向けのマニュアル本を参考にしながら薬を処方することになります。 高齢者に薬を処方するときには、高齢者の生理的な薬の効き方の特徴や、ほかの病気の治療で薬を飲んでいる場合などさまざまなことを考慮する必要があります。しかし、マニュアル本にそういったことは考慮されておらず、高齢者も若い人と同じ処方しか書かれていません。 そのため、一人の医者がマニュアルどおりに薬を2~3種類処方すれば、三人の医者にかかっている人では単純に計算しても、6~9種類の薬が処方されることになります。 最悪なのは、服用している薬の副作用を、別の病気と誤認し、その治療のために新たな薬が連続して処方されてしまうことです。薬の副作用を薬で治そうとするので、いつしか薬の量が増えていき、その薬同士の相乗効果でさらに副作用が出るのです。これは処方カスケードと言われ、「カスケード」(=連続する滝)のように次から次へと薬が投入される状態です。 たとえば、認知症薬のなかには、尿失禁という副作用をもつものがあります。これが副作用だと気づかれなかった場合、尿失禁を改善するために抗コリン薬が処方されます。この薬には「薬剤性せん妄」という最も注意すべき副作用があります。この薬剤性せん妄の症状は一時的に脳が機能不全を起こすことによって、突然、注意散漫になったり、軽い意識障害が出たりするなどのさまざまな精神状態のこと全般を指します。症状は、数時間から数日で収まるのが一般的です。ただ、認知症の症状と誤って捉えられ、さらに抗精神病薬が処方されてしまう可能性があるのです。 副作用がさらに薬の数を増やし、それがさらに重大な副作用を生む。この悪循環の行きつく先は、薬漬け地獄です。