イチローを基本年俸約8000万円で契約したマリナーズの算盤勘定
先週金曜日、ベン・ギャメル(25)が打撃練習中に右の脇腹を痛めた。その時点でのチームトレーナーの判断は、「数日間、様子を見よう」というもの。 しかし、翌土曜日朝、痛みがまるで引かなかった。精密検査を経て、4~6週間の離脱が判明するのは月曜日 ── 5日のことだが、土曜日の時点で、マリナーズのジェリー・ディポトGMは、このオフに何度も連絡を取り合っていたイチローの代理人に電話をかけた。 その代理人 ── ジョン・ボッグス氏は、「具体的な交渉が始まったのは、週末の初め ── つまり、土曜日だ」と明かす。 そこからが速かった。日本時間日曜朝には、イチローに連絡が入ったよう。月曜日には渡米して、身体検査を受けた。 2012年7月にイチローはヤンキースへ移籍しているが、このトレードを申し入れたのはイチロー。また今回マリナーズからのオファーを受ければ、必然的に、その先のことを意識せざるを得ない。この契約には様々な含みがあるが、「いずれまたこのユニホームを着てプレーしたいという気持ちが僕のどこかに常にあった」というイチローは、その現実味が増したとき、「躊躇はまったくなかった」と話す。 「このお話をいただいたときに、考える理由すらなかった」 迷いはなかった。 ボッグス氏によると、マリナーズとの交渉がスムーズにいったのは、「ジェリー(GM)とはこのオフに、何度も、話をしてきたからだ」と言う。 「お互いに何を求めているのか分かっていたから」 予備交渉のようなやり取りが、断続的に行われていた。 ただ会見後に判明したイチローの年俸はわずか75万ドル(約8000万円)。過去最大で受け取っていたときの年俸が1700万ドル(約19億円)だったので、そのわずか4.4%である。 当然、出来高がつき、150打席、200打席、250打席、300打席、350打席、400打席に達する度に、20万ドル(約2100万円)のボーナスが加算される。最大で200万ドル(約2億1000万円)近くになるが、厳しい内容ではある。イチロー自身の価値観が、そこにはない、とはいえ、である。 たとえイチローが満額を受け取ったとしても、おそらくマリナーズは、一日で元が取れる。仮にシーズンの最終戦、なんの発表がなかったとしても、おそらくスタンドは、いっぱいになる。経済効果としては計り知れない。