日本と韓国の「未来志向な関係」とは何だろうか 将来像の共有へ模索続く 考えの違いから理解を深められるか
▽両国で「戦略協議体」の設置を 最後に、日韓関係に詳しい韓国・国民大日本学科の李元徳(イ・ウォンドク)教授に、両国関係の展望について聞いた。 「1998年に当時の金大中大統領と小渕恵三首相が署名した日韓共同宣言は、歴史を見据えつつ未来に向かって歩むという画期的な内容で、その後の日韓関係の基準点になっている。日韓双方にとって「未来志向」は望ましいものだが、韓国側が過去の直視を前提としているのに対し、日本側は過去の問題は解決済みとの立場で、その差が摩擦や対立を生んできた。 尹錫悦政権下で日韓関係は改善されたが、韓国では、徴用工などの歴史問題で日本に譲歩しすぎているとして、対日政策に不満を抱いている世論が多数派だ。 一方で日本側は、政権交代などで方針が変わるのではないかと不安を感じる。未来に期待しながらも、不満と不安があるのが日韓の現状だ。 韓国は政治的にも経済的にも力をつけて、日本の影響力が強かった「垂直的関係」から、より対等な「水平的関係」に変化した。さまざまな分野での交流が進む中で、歴史問題を強く意識する雰囲気は薄れていくと思う。政治家が日本との対立をあおり、支持を集めようとすることは、もう通用しなくなる。
だが、日韓が歴史問題に触れず、未来のことだけを語る関係になるというのは韓国では受け入れられず、現実的ではない。意見の対立がなくなる可能性はほとんどなく、むしろ必ず起こりうることと考えるべきだろう。 そうであるならば、対立が起きても拡大させず、できるだけ小さくするよう日韓での戦略的な協力や工夫が必要となってくる。関係が悪化しても当局間での対話チャンネルを維持することが重要で、民間を含めた日韓の「戦略協議体」を設置することが必要だ。 そこで話し合うのは安全保障や経済分野が中心となるが、それに加えて歴史問題を管理することも大切だ。政権交代など政治情勢が流動化しても、それに振り回されない日韓関係を模索することが求められている」 × × 1962年韓国・大田(テジョン)生まれ。ソウル大卒。東大大学院で博士号(国際関係論) ▽メモ「日韓共同宣言」 日本と韓国が1998年10月8日に発表した宣言。「日韓パートナーシップ宣言」とも呼ばれる。当時の小渕恵三首相と金大中(キム・デジュン)大統領が署名した。小渕氏は宣言で、日本の植民地支配に関し「韓国国民に多大の損害と苦痛を与えた歴史的事実を謙虚に受け止める」と表明し「痛切な反省と心からのおわび」に言及した。金氏は小渕氏の歴史認識を評価した上で、過去の不幸な歴史を乗り越え、未来志向の関係を発展させるため、互いに努力する必要性を強調した。