日本と韓国の「未来志向な関係」とは何だろうか 将来像の共有へ模索続く 考えの違いから理解を深められるか
未来を担う若者たちが、今後の日韓関係を考える取り組みもある。慶応大の学生団体「KNOCK」は、政治や文化、教育などの分野で日韓の課題や解決策を議論している。モットーは「自分の意見を絶対視せず、相手を尊重すること」。日韓にルーツを持つ学生約50人が参加する。 テーマごとに7~8人のグループに分かれ、現状を分析し、関係発展のための方策についてプレゼンテーションする。「政治」のグループに加わった韓国南部・釜山出身で慶応大2年、曹祥銘(26)は「議論の結論は一つでなくていい。多様な意見を肯定できる関係をつくるべきだ」と発表した。 「重要なのは、良好な日韓関係を維持すること。若い世代が互いの文化を消費することは、関係の安定につながる」。曹がそう話す一方で、ほかの参加者からはこんな声も上がる。 「互いの違いを知ることが理解につながる」「感情的な議論を避けるにはどうしたらいいか」 参加者は「論理性」「実現可能性」などの項目でプレゼンを評価し、最も評価の高かった内容を実践していく。団体の代表で2年の越路華(20)は「率直な声を知ることは、偏見をなくすことにつながる。活動の趣旨はそこにある」と言う。「歴史のとらえ方が国によって違うのは仕方ないが、将来像を共有することはできる。それを模索するのが、若い世代の役割だと思う」
▽大人の責任 戦後補償問題に詳しい弁護士の内田雅敏(78)が指摘するのは、教育の大切さだ。「謝罪と金銭的な給付だけでは歴史問題の解決にはならない。被害者への追悼を中心とした後世への歴史教育が、最も重要だ」 日本政府は1965年の日韓請求権協定で賠償問題は「解決済み」との立場だが、内田は「協定によって歴史問題が終わったと考えるのは間違いだ。過去への理解を深めていくことが、未来につながっていく」と述べ、民間交流の積み重ねを重視する。 では、交流によって相互理解はどこまで深まるのだろうか。韓国・峨山政策研究院研究委員の崔恩美(41)は「一時的な文化体験にとどまらず、なぜ韓国が歴史問題に敏感なのか考えることも大切だ」と話す。 単に両国を往来する人が増えただけでは、お互い認識は変わらない。崔はこう強調した。「たとえ考えが一致しなくても、根本的な問題に向き合うことが、日韓の未来志向には不可欠。それを若い世代に示すことが、大人の責任だ」