バイデン・習近平会談の最大のポイントは「関係の改善」ではない
日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が11月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。APECの財務相会合、IPEFの閣僚級会合などがスタートしたアメリカの外交ウィークについて解説した。
アメリカで外交ウィーク開幕
日本やアメリカなど21の国や地域が参加する「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」の財務相会合が11月12日、サンフランシスコで始まった。また13日から2日間の日程で、日米韓など14ヵ国が参加する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合も始まった。 飯田)またAPEC閣僚会議や、15日からはいよいよAPEC首脳会議が行われます。訪米中の西村経産大臣は13日、IPEFの初日の閣僚会合後、「貿易分野全体として実質妥結に至らなかった。(部分的な)進展はあった」と明らかにしました。IPEFの枠組みにはインドも入っていますが、全体としてはどういう展開になるのでしょうか?
IPEFはバイデン政権が終わればなくなる ~アジア側にうまみがない
秋田)IPEF自体はよく言われるように、バイデン政権が終われば消えてしまうような枠組みだと思います。アジア側にうまみがなさすぎるのです。アメリカの貿易解放を含まず、アメリカ市場を開けるわけではないけれど、ルールづくりをもう少し明確にして、貿易やデジタルなどで「協力しやすいようにしましょう」という枠組みですから。アジア側はルールだけを厳しくされるけれど、その分「きちんとアメリカに売れるのか」と言うと、そうではありません。 飯田)アジア側からすれば。 秋田)でも、アメリカにはこれしか通商政策はないので、何もないよりはいい。環太平洋経済連携協定(TPP)から抜けてしまったトランプ氏よりはいいのではないか、という話だと思います。
アメリカ国内の4分の3は、自由貿易はほどほどにして、アメリカ国内の雇用を守って欲しい
飯田)政治的に、アメリカのTPP復帰は絶望的ですか? 秋田)9月に南部アトランタからジョージア州へ取材に行き、トランプサポーターの方々と会って話を聞きました。有権者の構造からみると、アメリカはいま、完全に自由貿易を進めるという雰囲気ではないと思います。 飯田)ないですか。 秋田)いまのアメリカは極端に言えば、トランプサポーターが4割くらいで、民主党サポーターも4割くらい。どちらも4割強です。そして1割くらいの人がどちらにいこうか迷っており、ほとんど二極化されています。トランプサポーターの人たちはアメリカファーストですから、自由貿易に関しては慎重です。残り半分の民主党のうち、バーニー・サンダースさんやエリザベス・ウォーレンさんなどの左派は反対です。「アメリカの労働者を守って欲しい」と言っています。この前も大きな労組の集会がありましたね。 飯田)自動車労組の。 秋田)4分の3くらいは自由貿易はほどほどにして、アメリカ国内の雇用を守って欲しいという、民主党左派と共和党・親トランプの人たちです。そうすると、バイデン大統領は(TPP復帰を)やりたいと思っても、選挙に負けてしまうので、できるわけがないですよね。 飯田)その辺りの外交も内政から派生するのですね。 秋田)そのように強く感じました。