【報知映画賞】特別賞に平泉成「何年ぶりかに、かみさんとハグしましたよ」80歳にして初の映画賞受賞
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。「九十歳。何がめでたい」(前田哲監督)の草笛光子(91)、「明日を綴る写真館」(秋山純監督)の平泉成(80)が特別賞に選出された。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! * * * ぬくもりのあるハスキーボイスで知られる平泉は俳優生活60年、80歳にして初の映画賞受賞となった。「一度も映画賞をいただいたことないですからね。初めてなんです。とってもうれしいです。家で何年ぶりかにかみさんとハグしましたよ」と目尻を下げた。 写真館を営むカメラマンの鮫島武治を演じた。初めて主役を担い「お客さんが入らなかったら、どうしよう」と不安もあったが、「家族や夫婦で安心して見ることができるし、幸せな気持ちになる映画」と完成度に満足している。師弟関係となる若手カメラマン役のAぇ!group・佐野晶哉(22)をはじめ、佐藤浩市(63)、高橋克典(59)、市毛良枝(74)らが「成さんのために」を合言葉に支えてくれた。 1964年、市川雷蔵さんとの出会いをきっかけに大映入り。エキストラからキャリアをスタートさせた。雷蔵さんが主演した「新鞍馬天狗」の京都・嵐山ロケ。「みぞれが降る寒い日に、岩場で雷蔵さんに斬られて、川に落ちてプカプカと浮かぶ役があったんです。先輩や同期が嫌がるなか『僕やります!』って手を挙げました」。それをきっかけにセリフのある役をもらい、役者人生の転機になった。 「とにかく私は地味な俳優。スターなんて夢のまた夢。石原裕次郎さん、高倉健さんは、自分とはあまりにも距離がある」。大滝秀治さん、笠智衆さんら渋い魅力のある俳優に憧れた。「演技に困った時には『大滝さんだったら、どう演じるかな?』とイメージしています」と明かす。 「派手なことは一つもなく、60年間、コツコツとやってきた。『芝居って何だろう』って探し続けている。まだ、あの世には逝きたくないからね。まだまだ頑張りますよ」。今回の受賞を糧に、いぶし銀の輝きに磨きをかける。(有野 博幸) ◆明日を綴る写真館 さびれた写真館を営む鮫島(平泉)に新進気鋭のカメラマンの太一(佐野)が弟子入り志願する。太一は、カメラマンと被写体という関係を超えて寄り添う鮫島の姿勢に心を打たれ、自分に足りない部分に気付く。 ◆平泉 成(ひらいずみ・せい)1944年6月2日、愛知県生まれ。80歳。64年に大映京都第4期ニューフェイスに選ばれ、66年の「酔いどれ博士」で映画デビュー。主なドラマは96年開始の「はみだし刑事情熱系」シリーズ、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年度前期)など。主な映画は「その男、凶暴につき」(89年)、「20歳のソウル」(22年)など。 ▼特別賞 選考経過 平泉は「明日を綴る写真館」、草笛は「九十歳。何がめでたい」での名演と、日本映画界への長年の貢献により選出。「『明日を綴る写真館』『九十歳。何がめでたい』、ともに俳優キャリアの総決算。日本映画の良心」(見城)、「(『九十歳―』で共演した)草笛さんは日本中の人たちに生きる力を与えた」(LiLiCo)。 ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
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