「法律にのっとってさまざまな選択肢がある」兵庫県斎藤知事が意地でも辞任しない”3つの拠り所”
現在の兵庫県議会は自民党が37議席、維新の会が21議席、公明党が13議席、ひょうご県民連合が9議席、日本共産党が2議席、無所属が4議席という構成になっている。 このうち維新は昨年4月の県議選で4議席から21議席と大躍進したが、現在はIR問題や斎藤知事問題で政党支持率が低迷。斎藤知事の問題の影響もあって、8月25日の箕面市長選では維新の現職が惨敗した。よっていま県議会を解散されては、特に維新は議席を大きく減らす可能性が非常に大きい。
もう1つの対抗手段が、9月の定例議会に提出予定の約100億円にのぼる補正予算だ。これについて斎藤知事は12日、記者団に「家計応援キャンペーンということで、プレミアム付きの商品券的なものをさせていただくことを予定しているし、LPガスの値上がりに対する支援をさせていただくことが中心になる」と披露したが、まさに県民の生活を“人質”としたやり方といえる。 また告発文書問題の内容を調査する第三者委員会も、斎藤知事の“居座り”の理由となるかもしれない。第三者委員会は9月18日に初会合が開かれ、来年3月上旬に調査結果が公表される予定だが、「それを待つ」という名目で、半年ほど粘ることができる。
■兵庫県知事は幼い頃からの夢だった 「元彦」という名前は第36・37代兵庫県知事を務めた故・金井元彦にちなんで斎藤知事の祖父が付けた。日本ケミカルシューズ工業組合理事長を務めた祖父は、兵庫県政にも顔が利き、自民党国会議員が県議時代の後援会長も務めていた。兵庫県知事になることは、斎藤知事の幼い時からの夢であり、祖父との約束でもあったのだろう。 自分は何も悪いことはしていない、兵庫県のために(維新に倣った)改革を進めていこうとしただけだーー。斎藤知事はそのように思い込んでいるに違いない。しかし問題が全国的に知れ渡った以上、もはや汚名返上は不可能だ。
公益通報制度を解せず、職員を死に追い込んだ知事として、斎藤知事の名前は兵庫県史に残るだろう。また議会の不信任決議案に対して解散権を行使するなら、都道府県議会で最初の例として記録される。 子曰く。知之これに及ぶとも、 仁之これを守ること能はざれば、 之を得と雖も、必ず之を失う(知恵が十分にあっても、仁の心を保たなければ、人民の支持を得たとしても、そのうち心は離れていく)ーー。 議会解散、補正予算、第三者委員会を盾に居座る斎藤知事が失うものは大きいが、兵庫県が失ったものはさらに大きい。
安積 明子 :ジャーナリスト