【闘病】ALSで亡くなった父に続き自分も発症… 「家族性ALS」を患って始まった壮大なチャレンジ
病気と「向き合う」のではなく「受け入れる」
編集部: 今後、どのように治療を進めていきたいと思いますか? 青木さん: これまで皆様のご支援のお陰でトフェルセンの治療を3回行うことができました。トフェルセンは継続投与が必要なので、現在4回目、5回目の治療を目指して募金活動をしています。円安ということもあって、今後も継続してこの治療を続けていくことは、正直なところ現実的ではありません。 編集部: そのためにも、一刻も早くドラッグラグの解消が必要なのですね。 青木さん: 現在、「トフェルセン」の国内における迅速承認を要望する署名活動(※プロフィール内「サポーターの会」HP中の活動報告を参照)と、ALSの患者さんやご家族を対象にしたアンケートを行っています。11月中旬、ALS協会の協力もあり、厚生労働省と面談を行うのですが、その際に署名とアンケートを提出する予定です。 編集部: 政府や医療機関に望むことはなんですか? 青木さん: 1日でも早く、ドラッグラグを改善してほしいと思います。欧米では早期承認制度が確立されていて、新薬を承認するまでの期間を短くしようという動きが活発です。でも日本にはそうした制度がありません。 編集部: 一刻を争う患者さんにとっては、とてももどかしい問題ですね。 青木さん: 海外で承認された薬が日本で認められるまで、4年もかかったというケースがあります。その4年間で、いったいどれだけの命が救えたか。医薬品の承認においては未来のことだけではなく、「今の患者」をもっとみてほしいです。 編集部: 新薬が承認されたら、一般には治療法がないとされているALSの希望の光になりますね。 青木さん: そう思います。難病とされる病気でも、私は可能性をあきらめたくない。少しでも可能性があるなら、確実にアプローチしていきたいと思っています。 編集部: あきらめないという強い気持ちが大事なのですね。 青木さん: 確かにそれはそうなのですが、「あきらめない」という気持ちだけを前面に出すと、かえって自分が苦しくなって生活はうまくいかないと思うんです。 編集部: それはどういうことですか? 青木さん: 自分の過去を振り返っても思うのですが、病気に対して真正面からぶつかると自分が苦しくなる。たとえば「どうしてこんなにリハビリを頑張っているのによくならないんだ」とか……。頭のなかは常に病気のことでいっぱいになり、病気に人生を支配されてしまいます。 編集部: なるほど、ではどんな心境が必要なのでしょうか? 青木さん: 病気を受け入れる気持ちがないと、病気は良くならないと思っています。たとえ進行したとしても「しょうがない」と受け入れて、今の最善を尽くす。「病気が自分のすべて」になってしまうのではなく、「自分の一部に病気がある」くらいがちょうどいい。病気と正面から対峙するのではなく、受け入れる姿勢が大事なんじゃないかなと思います。 編集部: 最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。 青木さん: 可能性を感じるものにはしっかりとアプローチをして、ベストを尽くすことが大事だと思っています。それは病気だけでなく、仕事や勉強などでも同じこと。私も「ALSは治らない」「難病」と言われ、希望を閉ざされることもありますが、それでも可能性は捨てたくない。どんな難題だとしても、少しでも可能性を感じることがあれば、チャレンジする姿勢が大事だと思います。