安い電気を“買いだめ”するという発想 ポータブル電源は「家庭用蓄電システム」の夢を見るか
今、解決すべき問題とは
ソリューションの一つは、ポータブル電源の有効活用だ。23年あたりまでは、ポータブル電源はキャンプブームの好調な推移を受けて、主に屋外で使用されていた。だがご存じのように24年はブームも沈静化してしまい、ポータブル電源も活動の場を失うこととなった。 一方で8月8日に宮崎県沖で発生した大地震に連動して「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発報されたことや、翌日の9日に今度は神奈川県沖で震度5弱の地震が連続して発生したことで、ポータブル電源は防災用途として再認識されるようになった。 ただ、それらのポータブル電源も普段から活用されるわけではない。蓄電してそのまま塩漬けという状態にあるのでは、活用しているとはいえない。そこで、せっかく家庭にある程度の容量のバッテリーがあるなら、日常的に電力需要を調整するために使えないか、ということである。 実証実験中は、yanekaraが直販する100台のDELTA 2のみが対象となるが、将来的には既にユーザーが購入済みのバッテリーや、別の販売店から購入したバッテリーに対しても対応を検討するとしている。ECOFLOWのこれまでの販売台数は明らかになっていないが、7月には24年度家電量販店におけるポータブル電源販売台数が1位であったことを記念するキャンペーンを行っていることから、国内だけでも相当な台数が存在するはずだ。全部合わせれば、系統電力用巨大蓄電施設の一つに匹敵する容量になるだろう。 実際に米国カリフォルニア州は、電力貯蔵設備容量で世界のトップを走るが、日経クロステックが報じたところによれば、その内訳は系統電力用大規模蓄電施設が84%、住宅用蓄電池が10%、商業・産業用蓄電池が6%となっている。住宅用蓄電池も、集めればバカにできない容量となっている例は既にある。 2つ目のソリューションとしては、家庭用蓄電池を固定式ではなく、可動式であるメリットを最大化するということだ。電気自動車で知られる米Teslaが22年に家庭用蓄電池市場に参入し、新しい起爆剤となっているところではある。 その一方で、家庭用固定蓄電池は価格が高く、しかもその15%は工事費であるという。23年に三菱総研が経済産業省向けに作成した調査報告書によれば、固定型蓄電池は容量に応じて価格が上がるという相関関係が見られるが、工事費に関してはそれほど相関関係が見られず、20万円を中心に幅がある程度となっている。 工事費が同じなら大容量を入れたほうが得ということになるが、そうなると全体の導入コストは高くなる。一般には200万円から、ということになるだろう。しかも設置工事が可能ということでは自己所有の戸建住宅にしか導入できず、借家やマンションには導入できない。基本的には補助金をあてにした、ソーラーパネルと込みで新築住宅向けのソリューションということになる。 一方固定式ではないポータブル電源では、家庭用コンセントの後ろに取り付けるので、基本的に電気工事や施工費は不要だ。今回対応モデルに選定されたDELTA 2は容量1024Whのタイプだが、それほど大型というわけではない。シリーズには最大容量モデルのDELTA Pro Ultraがあるほか、専用拡張バッテリーで容量が増やせるDELTA 3 Plusなどのラインアップもある。これぐらいの容量になれば、固定式家庭用蓄電システムと変わらない。将来的にはこうしたモデルも、対応となるだろう。