静かな山村がバイクの聖地に、若桜鉄道「隼」駅に全国から2500台集結…スズキ名車と同名
ローカル線若桜(わかさ)鉄道「隼(はやぶさ)駅」(鳥取県八頭(やず)町)に全国からライダーが集まり、静かな山村が活気づいている。スズキの大型バイク「隼」と同名で、バイク専門誌が16年前に「隼駅へ集まろう」と呼びかけたのがきっかけだ。1日の利用者は約40人(2023年度)の小さな無人駅だが、土日は立ち寄るツーリング客の姿が絶えない。 (鳥取支局 中島高幸、写真も) 【地図】鳥取県八頭町の隼駅
「のどかな景色に癒やされる。来るたびに友達ができるのがいい」。秋日和となった10日、愛車の「隼」で250キロ以上の道のりを走って隼駅を訪れた福井県鯖江市の会社員(53)は顔をほころばせた。
この日は、隼の車体やロゴをラッピングした鉄道車両とバイクが並走するイベントが開催され、約40台が参加。駅前で記念撮影などを楽しんでいた。
にぎわいの始まりは、2008年夏にさかのぼる。バイク専門誌が「8月8日はハヤブサの日」と、隼駅への集合を呼びかけたのだ。当日は7台が集合し、ライダーたちは「来年も集まろう」と約束したという。
地元も協力してきた。最初の年は地域住民がスイカをふるまう程度だったが、有志が翌09年、若桜鉄道の活性化を目指す「隼駅を守る会」を組織。駅の清掃などを行い、8月8日に第1回「隼駅まつり」を開いた。
地元産品販売や有名レーサーのトークイベントなど盛りだくさんで、スズキも協力。約200台が集まった。コロナ禍で中止した年もあったが人気は根強く、今年の8月は、過去最多の約2500台が集まった。
山あいの自然を満喫できる国道29号でのツーリング人気も相まって、活況は隼駅周辺にも広がった。約8キロ離れた「道の駅はっとう」(八頭町)では、21年から隼グッズやバイク用品も置き、週末は1日30~40台のバイクが訪れる。
企画したのは道の駅副駅長の山村俊太さん(40)で、自身もライダーだ。何度も訪れるうちに「地元のおもてなし精神に感動し、自分も力を発揮したい」と、8年前に奈良県から移住。鉄道会社員から転身し、ライダーが喜ぶ企画に知恵を絞る。