住友金属鉱山、脱炭素技術の開発促進。ニッケル水素還元・CO2吸収技術など
住友金属鉱山は10日、カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みに関する説明会を開催した。石炭の代替としての木質バイオマス混焼の取り組みのほか、低CO2ニッケル新製錬法や直接リチウム抽出法、廃鉱石を使ったCO2吸収・固定化技術などCNに向けた革新的技術開発の取り組み事例も紹介。ニッケル製錬では温室効果ガス(GHG)排出ゼロも可能とするニッケル優先還元法と水素還元法の開発に取り組む。 同社は2050年のCNに向けて、30年度までに15年度比38%以上のGHG排出量削減を中間目標とする。30年度に向けては省エネ・高効率化の徹底、重油・石炭からLNGや木質バイオマスへの燃料転換、再生可能エネルギーの自家発電設備の導入拡大などを進める。 木質バイオマスでの石炭代替では、フィリピンの二つのニッケル製錬拠点(CBNC、THPAL)で、石炭火力自家発電設備の燃料の一部を木質バイオマスに置き換えて混焼する試験を23年度から開始した。足元は数%の混焼割合だが、設備と操業への影響を確認しながら段階的に混焼比率を上げていく計画。国内でも日向製錬所や四阪製錬所などでキルンに使用される石炭(燃料および還元剤)の木質バイオマス混焼の可能性を検討する。並行して木質ペレットの安定調達に向けた検討も進める。 50年のCNに向けては革新的技術の開発を推進する。低CO2ニッケル新製錬法の開発では、回転炉床炉という装置を利用し、効率的にニッケル還元を行う「ニッケル優先還元法」と呼ぶプロセスの開発を進め、2050年までの実操業開始を目指す。同プロセスは従来法に比べ低温・短時間の処理が可能で、GHG排出量と使用エネルギーの大幅な削減が期待できる。また、バイオ原料を還元剤として使用し、グリーン電気を熱源とすればGHG排出ゼロも可能となる。 ニッケル製錬では水素還元法の技術開発も進める。基礎試験では酸化鉱からのニッケル還元メタルの回収目標を達成しており、現在はこれを実現する装置の検討を含めたプロセス全体の開発に取り組んでいる。30年までにパイロット試験の着手を目指す。 廃鉱石を使ったCO2吸収・固定化技術開発では、比ニッケル拠点周辺に大量に存在するマグネシウム鉱石を活用する技術開発を行う。ニッケル酸化鉱に随伴するマグネシウム鉱石には高いCO2吸収能力がある。東京大学との共同研究で、火力発電の燃焼排ガス中のCO2を吸収・固定化する技術開発を進める。50年までのプロセス完成を目指す。 南米で実証試験を進める直接リチウム抽出法の開発については、プロセス信頼性の検証や吸着剤の改善、リチウム回収対象塩湖の絞り込みを進めており、今後数年内に技術の確立を目指す。同社のプロセスは吸着剤を用いてリチウムを選択的に吸着回収する手法で、製造過程でのGHG削減など環境負荷の低減が図れる。