「やりがいだけじゃ生きていけない…」年齢引き下げの〝キャリア官僚〟試験 受験した大学生の本音
元官僚の専門家が訴える「試験改革」
このような現状について、官民のキャリアに詳しい専門家はどのように考えているのでしょうか。 元厚生労働官僚で慶応大准教授の吉井弘和さんは「官僚の人材確保の課題は深刻です。官僚人気は過去のものと言われても仕方ない状況だと言えるでしょう」と警鐘を鳴らします。 その上で、学生たちから聞かれた「記念受験」「民間の保険」という本音については「必ずしも悪いことばかりではありません」と指摘します。 「たまたま合格していることが、後々、真剣に応募を考えてくれることにつながるかもしれません。『保険』だと思っていたけれど、後から『本命』になることもあります。悪い意味ではなく、大学生の『社会人としてやりたいこと』というのは、揺れ動くものです。社会人になったことがない人がほとんどなので、当たり前のことです」 官僚に関心を持っている学生に幅広く受験してもらうにはどうすればいいか。官民を越えたキャリア支援に取り組む「VOLVE」の代表取締役でもある吉井さんは、試験内容の改善が必要だと訴えます。 「受験するかどうかを決める心理的なハードルを下げるため、国家公務員に特化した試験の内容を減らしていくべきです。今の試験内容は、事務処理能力の高さやキャパシティーの広さを測るうえで有用ですが、そうした能力を測る別の方法もあるはず。採用試験における進化が期待されます」
学生同士が企業の〝品定め〟する時代に
同世代の学生たちの本音を聞く中で印象的だったのが「やりがいだけでは生きていけない」という言葉です。官僚の仕事内容に魅力を感じつつも、待遇に不安を感じる葛藤がにじんでいるように感じました。 試験内容を見直すべきだという吉井さんの提案は、試験問題について「『教養』と題して大学受験のような内容を出題する意味はあるのだろうか」と思っていた私としても、共感する部分が多くありました。 試験がより仕事に必要な能力を測るものとなれば、学生にとってもっと受験のハードルが下がるかもしれません。 民間企業の採用では、面接を終えた学生同士が情報交換をして、企業の「品定め」をしている時代です。なぜなら、その組織の特徴が最も出るのが、採用の場面だということをわかっているからです。 待遇改善とあわせて、試験内容を時代に合わせてアップデートすることは、キャリア官僚の志望者を増やす大事な一歩になるのかもしれません。