横浜DeNA尚成が語る、引退を撤回させた家族の言葉
――葛藤? 「メッツでやってから、2年契約でエンゼルスへ移籍しました。いい契約を結べて、そこに甘えていた面もあったんです。エンゼルスでは、『先発もリリーフもやってくれ』と言われてたんですが、先発には戦力が整っていて、チャンスはありませんでした。それでも、ヤンキース戦に先発要因がいなくなって、『尚成が抜擢されるんじゃないか』という噂が流れたことがあったんです。でも、先発機会はありませんでした。監督は、僕を先発でなく、ブルペンの戦力と見ていました。僕は先発として長いイニング投げたい。でも、おまえは戦力的にリリーフだと、言われる。そこに葛藤が生まれ、うまくいかなかったんです」 ■上原とは対照的にレールに乗れなかった ――つまりモチベーションの問題ですか? 『力が落ちた』のではなく? 「上原(浩治)が、レッドソックスでリリーフとして世界一になって脚光を浴びましたね。『いきなり凄くなったよね』と、言う人もいるが、それは間違っているんです。僕は、彼と何十年も付き合っているから、よくわかるんですが、彼は、ずっとあれくらいの力を持っていた。怪我させなければ、ああいう結果は、とっくに出せてきただろうし、『抑えで力を発揮してくれ!』と言われれば、そこで力を出せる投手なんです。決してポンと上がったわけでなく、元々、実力があって抑えというポジションで、うまくレールに乗ったんです。それに比べて、僕は対照的にレールに乗れなかった。そういうことなんです」 ■真剣に野球を楽しむということ ――アメリカで4年間、野球をやって「新しく見えてきた野球がある」と記者会見で仰っていました。具体的に、その見えてきたものとは何ですか? 「野球を楽しむということです。メジャーの連中は、『俺はこのバッターとこういう戦いがしたいんだ』と明確に見せて、勝負を楽しむんです。そして、マウンドに上がるまでの調整を楽しみ、準備を楽しむ。ヘラヘラと、ふざけるという楽しみ方じゃないんです。野球に真剣に向き合いながら、勝負を楽しんでいます。対して、日本では、プレーひとつにしても、こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけない、と型にはめられているように感じます。アドリブが効かない。10年、日本でプレーしましたが、選手が埋もれてしまっています。もっと、野球を研究し追及したところに新しい野球の楽しみ方があるはずなんです」