<箱根駅伝>留学生ランナーが変える箱根予選会地図。過去最多の9名出場
総合力の高い山梨学院大はトップ通過の候補で、創価大と拓大も通過が有力視されている。創価大は正月の箱根駅伝で12位。前回の予選会は3位で、そのメンバーで卒業したのは2名のみ。前回、個人総合4位に入ったムソニ・ムイルが成長しており、「集団走」の準備も抜かりはない。拓大はロードに強いチーム。例年、予選会にはしっかり合わせており、昨年も7位で通過した。前回、個人総合6位のワークナー・デレセで貯金が計算 できるため、他の選手たちは確実に走る戦略で臨んでくるだろう。 ボーダー付近にいるのが、国士大、日大、東京国際大だ。国士大は前回3年ぶりに予選会を突破するも9位通過。今季はポール・ギトンガが加入したが、他の留学生のような爆発力は発揮できていない。 前回10位通過の日大は個人総合トップの快走を見せたパトリック・ワンブィがいるものの、日本人選手の戦力がダウンしている。東京国際大は前回、モグス・タイタスの途中棄権が響き、15位に沈んだ。今季は11年テグ世界陸上5000m代表の渡邊和也が入学。近年は故障が続いていたが、予選会のエントリーにはこぎつけている。留学生と実績抜群の30歳ルーキーでタイムを稼げるか。 前回は、留学生が上位で走った日本薬科大が21位から18位、同じく桜美林大が30位から25位と躍進。留学生が不発に終わった武蔵野学院大は27位だった。この3校は戦力を考えると、今回の予選通過は難しいが、日本人選手の強化が進めば、来年は突破ラインに絡んできてもおかしくない。そして、新たに留学生を採用すると噂される大学も存在する。 おもしろいことに、前回の箱根駅伝は留学生を擁する大学4校すべてがシード権に届かなかった。1区間の距離が長く、10区間もある箱根駅伝は留学生ひとりで、すべてをひっくり返すのは難しい。しかし、箱根の予選会は一斉スタートということもあり、留学生パワーは大きくなる。 近年の予選会は、各々をフリーで走らせる大学は少なく、エース級がフリーでタイムを稼ぎ、その他の選手は「集団走」に近いかたちで、確実に20kmを走らせる形がスタンダードだ。留学生がいると、この戦略が非常にフィットする。留学生が上位で走ってくれるため、実力のない日本人選手たちは無理をする必要がなくなるからだ。稼ぐチャンスをつぶすかわりに、失速するリスクを回避。メンタル的にも楽に走ることができるため、チーム全体で考えるとプラスになることが多い。そうなると、留学生で“大量貯金”の期待できるチームは有利になる。 日本インカレの1万mは留学生が11連覇中。大学長距離界も、インターハイ5000mでケニア人留学生が25連勝している高校長距離界と状況が似てきた。 箱根駅伝は予選会を含めて、留学生の起用は各校1名という規定はあるものの、高校駅伝のように起用区間の制限はない。しかし、このまま留学生の参加が増え続けると、留学生不在の大学は予選会を突破するのが困難になるのは明らかだ。 今回の予選会は、名門・中大が本戦に返り咲きできるかに注目が集まっている。が、その裏には留学生を擁する大学の“走り”がカギを握っているともいえるだろう。 (文責・酒井政人/スポーツライター)