解けないと着れない:トキキル代表が語る、謎解きアパレルの新たな挑戦
ブランドを軸に独自の謎解きコミュニティが形成
トキキルは、前述の通りポップアップストアでのみ展開している。「欲しいときにいつでも買えるわけではない」という状態を意図的に作るため、現時点では常設店舗を持つ予定はないとのことだ。 この戦略は効果を発揮しており、トキキルの入店チケットはすぐに売り切れてしまう人気ぶりである。 「トキキルのチケットはありがたいことにすぐ売り切れてしまうので、まず『チケットを買えた』というところから、すでに達成感を得る体験が始まっています。また、入店しても、制限時間内に店内全ての服の謎を解くのはほぼ不可能なため、『また来たい』と思っていただけるような、継続して来店を促す体験も設計しています」 チケット獲得の難しさが体験の一部となり、同時に1度の来店では全てを体験できないという設計が、顧客の再訪意欲を高めている。
しかし、実際のお客様の声はどのようなものなのだろうか。SNSでは、「服には普段、無頓着だけれど初めて行った!描かれた謎を解くと買えるという企画自体が面白いなと思いました」「スタッフさんと気軽に話せる空間がすごく良かったです」「解けないと、着れない。超楽しいお買い物体験だった!」のようなポジティブな声があがっており、新たな体験を楽しんでいるのが見て取れる。 口コミを見てみると、洋服だけでなくスタッフへの評判が非常に良い。スタッフとお客様とのコミュニケーションを重視しているトキキルだが、どのように接客の質を担保しているのだろうか。 「私以外の運営メンバーが5名ほどおり、店舗スタッフは20名、さらに協力者やタイアップしたクリエイターを合わせると100人以上の協力者がいます。また、店舗のスタッフは、普段謎解き公演・体験型イベントでスタッフ・キャストをしている人を採用しています。その他にも、どのようなヒント出しが適しているかなど、お客様満足の向上のために常に話し合っています」 お客様との印象的なエピソードについても伺ってみた。 「お客様と着ているTシャツがかぶることがあり、普通の服だと恥ずかしかったりしますが、トキキルでは『お揃いですね!』と喜びあっています。あとは、最初はお客様としてご来店いただいていた方の中にも、現在ではクリエイターとして参加してくださっている方々がいます。スタッフ自身も謎解きイベントへ遊びにいくので、遊びにいった先でトキキルを着ている方と会うとうれしいですね」 これらのエピソードから、トキキルを中心とした独自の謎解きコミュニティが形成されていることがうかがえる。単なる洋服ブランドを超えて、共通の興味や体験を持つ人々をつなぐプラットフォームとしての役割を果たしているようだ。