チャンネル名で広告が付かない? 損失額約6000万円…YouTuberの改名とコンプラを考える
グループYouTuberの「EvisJap/えびすじゃっぷ」が改名することを発表した。2023年8月、リーダー・フジが動画に広告がつかないことに触れ、「チャンネル自体の評価がまずいことになっている」と発言して以降、スタッフ全員が退職、メンバー・たくがYouTuberと保険会社の営業を兼業するなど、厳しい状態にあった同グループ。なぜいまが改名することになったのか、YouTuberたちのチャンネル改名について考えてみたい。 【写真】損失額約6000万円の背景を語る人気YouTuber 「コラボ先に迷惑がかかる」 高学歴YouTuberとして知られる「EvisJap/えびすじゃっぷ(以降、えびすじゃっぷ)」は、動画に広告がつかないことなどを理由に財務状況が悪化、チャンネル登録者数67.2万人を誇る人気チャンネルながら借金1億2000万円を抱えるなど、度々世間を驚かせてきた(2024年9月19日時点)。9月2日には借金返済に向け、リーダー・フジがホストとして働きはじめたことを明かすなど、チャンネルの立て直しに奔走している状態が続いている。 9月17日に投稿した動画では、フジが「この度、僕たちは改名します!」と、活動開始から6年間使用してきたグループ名を変更することを発表。1番の理由として「広告がつかない」ことを挙げ、名称の「Jap」がGoogleの定めるコンプライアンスに抵触しており、広告が剥がされていることが判明したと述べている。長い間、なぜ広告が付かないのか理由が明確にわかっていなかったそうだが、最近になってGoogleから「Jap」というワードに問題があることについて「教えてくれるようになりまして」と発言。メンバーのけすによると、この「Jap」というワードによって広告がつかなかった動画はこれまでに125本。広告費に換算すると、その額なんと約6000万円にのぼるというから驚きだ。 問題となっていた「Jap」というワードは「Japanese」の略語で、日系人に対する差別用語としても使われるワードであることから、YouTubeの「ヘイトスピーチに関するポリシー」に違反していると考えられるが、改名に踏み切ったのには、海外クライアントとの交渉時にグループ名を理由に案件が白紙になったことや、タイトルにグループ名を入れるだけで広告が剥がれてしまうため、「コラボ先に迷惑がかかる」といった理由もあるという。なお新しいグループ名は全国で開催されるオフラインでの視聴者投票で決定し、「EvisJ◯p」「EvisJaq」「えびじゃ」を含む8つのなかから選ばれた名称を使用するとのこと。開票は10月14日の生配信で行われる予定だ。 (参考:ヘイトスピーチに関するポリシーhttps://support.google.com/youtube/answer/2801939?hl=ja) YouTuberにとって死活問題ともいえる広告剥がしだが、今回の動画でフジは、「昔は大丈夫だったんですけどね」と、以前は広告が付いていたことにも言及。それが、「どんどんコンプラが厳しくなるにつれて、うちらのグループ名も受け入れられなくなってきた」と、年々コンプライアンスに対する世間の目が厳しくなるなかで線引きに変化があったことが読み取れる。コンプライアンンスをめぐっては、5月に動画クリエイター・ジュキヤが運営する全チャンネルがBANされたのをはじめ、メンバーの家を破壊するなど過激なドッキリで人気を集めてきたチャンネルがーどまんが「どんどん規制が厳しくなっていくなかで、俺たちはどうしようと」と発言するなど、数年前に比べ線引きの基準が高くなってきていることを実感しているようだ。 そして改名については8月、車中泊やキャンピングカーに関する動画を6年間に渡り投稿している「クーピーチャンネル Coupy Channel」が、「クピ男の車中生活」への改名を発表(登録者数64.9万人)。「クーピー/Coupy」が商標登録の無断使用に該当するとしてある企業から連絡がきたことで、チャンネル名を変更することになったことがSNSで明かされている。同チャンネル名の改名は致し方なかったように思われるが、「クピ男」というあまりにもしっくりくる名前には、本人も視聴者も納得している模様。さらにキャンピングカーのプロデュース案件が動き出すなど、チャンネル名の改名を契機に活動の幅がプラスになっていることもあり、ファンからは改名について温かい声が寄せられている。 チャンネル名の改名や企画の方向性の変更は、YouTubeを主戦場にする動画クリエイターたちにとって今後を左右する大きな出来事だ。何はともあれ、長く活動するためには時代の流れにあわせ、柔軟に対応する姿勢が大事なのかもしれない。
せきぐちゆみ