「僕を見て2千本を打った選手だと思いますか?」球界随一の守備力を誇った中日の二遊間、荒木雅博さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(23)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第23回は荒木雅博さん。中日が誇った井端弘和さんとの二遊間「アライバ」コンビは12球団随一の守備力で、4度のリーグ優勝に貢献しました。渋いプレーぶり同様、派手さを好まない謙虚な人柄が言葉にもにじみ出ました。(共同通信=中西利夫) ▽ヒットが打てなくても、バントを一つ決めれば満足 落合博満さんが監督で来られた2003年秋、これで僕のレギュラーはないだろうと思いました。三冠王を3度も取られている方ですから、打てない人間を使うわけがないと。打つ方は「カス」のようなバッティングをしていました。本当ですよ、これ。僕はプライドも何もないです。素質は間違いなく、ない。昔から見よう見まねで、この人はこうやっているとまねしたら守備とかはできました。ただ、バッティングに関しては、まねができなかった。本当に何ともならない。練習していても何が良いのか悪いのか分からない感じでした。
落合さんは「とにかく自分の能力を10%上げてくれ。それだけでいい」と言われました。足が速いんであれば、それを磨いてくれと。だったら自分の生きる道は足。そこしかないと思いました。レギュラーはちょっと諦めた感はありましたね。走塁要員でも守備要員でもいいから、そこを極めて、いいところを伸ばして1軍で長いこと野球をやっていこうと思ったんです。それまでは、とにかく打ちたい、打率を残したいと常に思いながらやっていました。不思議なことに「もういいや、守備と走塁」って思った瞬間に何かがはじけたのか、次の年からレギュラーが取れたんです。きっかけは分からないんですよ。全部を一緒にやろうとすると、伸び率というのはそんなにないんでしょうね。短所は短所で、長所を伸ばしてカバーしようとか、長所だけで勝負していこうとした方が良いことがあるのかも。全てがそうじゃないんでしょうけど、僕の場合は長所を伸ばそうとして、短所の方にあまり目が向かなくなりました。あの年、それが一番の基点です。練習の割合はそれまでの打撃が6~7割、守備が3~4割から守備7~8割、打撃が2~3割と逆になった感じです。