介護テックの先駆者Rehab Cloudが「科学的介護」で拓く新市場
大久保亮は2016年6月、「介護を変え、老後を変え、世界を変える。」を掲げ、Rehab for JAPANを設立。同社は、介護事業者向けの業務支援SaaSとして「Rehab Cloud」シリーズを展開。機能訓練業務を簡単・安心・効果的に行える「科学的介護ソフト」を主軸とするプロダクト群を通じて、介護職員の事務作業の効率化、介護現場の付加価値向上、利用者の状態改善を支援している。18年のサービス開始以降、累計2600以上の事業所が有償で導入し、継続契約率は99.7%を誇る。 ライフタイムベンチャーズは、2017年2月のプレシードラウンドでRehab for JAPANにリード投資し、支援している。同VC代表パートナーの木村亮介が投資した理由とは。 木村:実はRehab for JAPANは、ライフタイムベンチャーズにとって最初の投資先なんです。まだプロダクトが完成していない創業1年目のタイミングでしたが、初回面談の場で「ご一緒させてください」とお伝えしたことをよく覚えています。 大久保:あのときはびっくりしましたし、今でもすごく感謝しています。 木村:投資を即決できた理由のひとつは、大久保さんがもともとリハビリテーションの専門職である作業療法士だったこと。ヘルスケア業界では近年、医師の起業家が増えましたが、コメディカル(医師以外の医療従事者)の起業事例はほとんどありません。医療従事者の人手不足や高齢化が深刻化するなか、要介護(要支援)者が長く健やかに暮らして、自己実現ができる社会にしていくことは国の大きな課題。大久保さんは豊富な現場経験をもち、その解決への確かなビジョンをもっていました。 大久保:作業療法士として九州の介護現場で働くなかで、ずっと専門領域の勉強をしてきたのですが、あるとき自分はそもそも社会の仕組みをよくわかっていないと感じて、東京の大学院に入って学び直しをしたんです。そこでテクノロジーがすごく発展していることを知り、これを使えば高齢の人たちをもっと元気にできるのではと思って、一念発起したという経緯があります。 木村:専門性が高い領域はベンチャーキャピタリスト側も理解するのに時間がかかりますが、僕は以前、医療介護専門のコンサルティング会社に勤めていたので、業界の構造や課題がよくわかっていました。そして、明らかに伸びるけれども、挑戦する人がいないマーケットだということを理解しているのは、VC業界に僕しかいないだろうと思った。これが即決のもうひとつの理由です。 大久保:でも、そこからいろいろありましたよね。例えば、最初のプロダクトはローンチしてから半年ぐらいでピボット(方向転換)することに。お客さんに使ってもらうことはできたけれども、MRR(月次経常収益)は8万円までにしか育たなかった。