実質賃金低下の逆風はなお止まず:2023年10-12月期国内GDP統計発表へ
10-12月期も物価高の逆風で個人消費の弱さが続く
内閣府は2月15日に、2023年10-12月期のGDP統計(1次速報値)を公表する。日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査が1月9日までに集計した37予測機関の予測平均では、実質GDPは前期比年率+1.2%だ。またNHKが2月6日に発表した12機関の予測平均は、前期比年率+0.4%~+2.5%である。前期比年率-2.9%と大幅減少となった7-9月期から増加に転じる見通しだ。 7-9月期の実質GDPは、在庫投資の減少、輸入の増加といった一時的要因によって大幅減少となった面が強い。しかし、実質個人消費、実質設備投資など民間内需はいずれも減少し、景気の弱さも併せて露呈された。 ESPフォーキャスト調査によれば、10-12月期は実質輸出が前期比+0.6%、実質設備投資が同+0.6%と、成長率を一定程度押し上げる見込みである一方、実質個人消費は同+0.3%となお力強さを欠いた状態だ。 2023年の春闘では賃上げ率は30年ぶりの水準となったが、高い物価上昇率が続く中、実質賃金の低下は続き、個人消費の逆風となった。また、有効求人倍率は2023年を通じて低下傾向、新規求人数は10-12月期に前年比減少幅が加速するなど、雇用情勢の軟化も個人消費の足を引っ張ったと考えられる。
日本銀行の消費活動指数は10-12月期に顕著に下振れ
2023年10-12月期の個人消費の実態は、GDP統計に表れる以上に弱い可能性もあるだろう。信頼性の高い供給側のデータから日本銀行が推計する消費活動指数によると、2023年10-12月の実質消費活動指数(季節調整済)は前期比-1.0%、インバウンド消費などを除いた実質消費活動指数(旅行収支調整済、季節調整済)は前期比-1.2%と、コロナ問題がなお深刻であった2022年1-3月期以来の下落幅となった(図表1)。
また、2023年10-12月の実質非耐久財消費、実質耐久財消費、実質サービス消費はそれぞれ前期比-2.2%、同-0.2%、同-0.3%といずれも減少した(図表2)。 日本銀行は、賃金上昇がサービス価格に転嫁されることで賃金、物価の好循環が実現し、2%の物価目標が達成される、と予想している。しかし、サービス消費の基調が弱い中では、企業は賃金上昇分をサービス価格に転嫁する動きは高まらないのではないか。